蒸着機構の熱動力学的研究
【研究分野】熱工学
【研究キーワード】
薄膜 / 真空蒸着 / 凝縮 / 振動励起 / 電子線 / レ-ザ- / 電界 / 蒸着機構 / YAGレ-ザ- / アルミニウム
【研究成果の概要】
熱エネルギ-レベルの操作を用いて金属蒸気機構を制御することを目的として、真空蒸着実験を行った。蒸発源としてクヌ-ドセンセルを用いて金属蒸気を発生させ、セルと対向して置かれた基板表面に蒸着させる。この時、シ-スヒ-タおよび液体窒素を用いて基板温度を制御した。レ-ザ-照射、電界付加等により形成される薄膜結晶構造の制御を試みた。蒸着中または蒸着後、反射型高速電子線回折(RHEED)により薄膜の結晶構造を観察した。また、形成した薄膜は走査形電子顕微鏡(SEM)およびEPMAを用いて分析した。蒸発材料として、アルミニウム、マンガン、銀、基板には(100)Siウェハ-、ガラス、(100)NaCl単結晶を用いた。その結果、以下のことが明らかになった。
1.基板温度が薄膜結晶構造に及ぼす影響は非常に大きい。基板温度が-196℃ではアモルファス状態の薄膜が得られ、基板温度が上がるにつれて結晶粒のより大きな多結晶薄膜が形成された。この結果より、基本的には熱エネルギ-の操作により薄膜結晶構造を制御することが可能であると考えられる。
2.薄膜結晶構造の局所的制御を目的として、蒸着中にYAGレ-ザ-を照射したが、レ-ザ-照射による薄膜結晶構造の変化は観察されなかった。
3.100A程度の金属薄膜においてすでにバルクと同じような赤外分光特性を示すことがわかった。
4.蒸着過程において常時電子線が照射された部分にはアルミニウムが多く蒸着した。しかし、結晶粒の大きさに変化はなかった。
5.大気中でへき開した(100)NaCl単結晶を基板とし、この基板に平行な外部電界(約150V/cm)を付加した状態でAgの真空蒸着実験を行った。膜厚約100μの不連続膜を得たが、電界による薄膜構造の変化は観察されなかった。これは、本実験では蒸発源としてクヌ-ドセンセルを用いたため、金属蒸気中にはイオンがほとんど含まれていなかったことが原因と考えられる。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
井上 剛良 | 九州大学 | 機能物質科学研究所 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】一般研究(B)
【研究期間】1989 - 1990
【配分額】900千円 (直接経費: 900千円)