異種高分子材料の界面熱抵抗に着目した革新的断熱材の開発
【研究キーワード】
界面熱抵抗 / 高分子材料 / 積層構造 / 断熱材 / 親和性 / 非相溶 / 相構造 / 分子動力学 / 熱拡散率
【研究成果の概要】
高分子材料中の伝熱は,主として高分子鎖に沿ったフォノン伝導によるため,互いに非相溶な材料間の界面において,分子の相互貫入が阻害される場合,相対的に分子間距離が拡大するため熱抵抗が発現する可能性がある.これまで,異種高分子材料の界面における熱抵抗に対する実験的計測ならびにシミュレーションによる推定を行ってきたが,より定量性を持ったデータの推定/取得が「革新的な断熱材」の開発に欠かせない.
そこで2021年度は,前年度に引き続き逆非平衡分子動力学(RNEMD)法により,互いに非相溶な材料組み合わせである,ポリスチレン(PS)とポリメチルメタクリレート(PMMA)の界面における熱抵抗の推定を実施した.温度制御法と圧力制御法はNose-Hoover法とParrinello-Rahman法を採用し,計算領域に対して周期境界条件を全ての境界に適用した.また,PSおよびPMMAの分子量として約3,000を想定し,下記で述べるシミュレーション結果の妥当性検討においては計算負荷の観点から粗視化モデルを,それを踏まえた界面熱抵抗の推定では全原子モデルを採用した.
RNEMDによる熱抵抗値推定における妥当性の検討では,まずRNEMD法により得られる対象材料の熱伝導率の推定値に与える分子末端間距離に基づく適正な計算領域サイズを評価し,本研究で検討した分子量では最低でも60Åが必要であることを確認した.その上で,RNEMDの実施における時間刻み,対象領域内の緩和が進み安定した結果を得るために要する時間,界面熱抵抗を考慮する際に導入する層構造方向厚さの最低必要厚さとして,それぞれ1 fs,3 ns,基準とする計算領域サイズの5倍となることを明らかにした.以上を踏まえ,PSおよびPMMAの界面熱抵抗として3.78×10-9 m^2 K/Wを得た.
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)