ナノスケール動的濡れ現象の分子動力学解析
【研究分野】熱工学
【研究キーワード】
動的濡れ性 / 分子動力学 / ナノ表面構造 / 界面熱抵抗 / 動的濡れ現象
【研究成果の概要】
定常状態にある円形の液滴を基板に近づける過渡的なシミュレーション結果から接触線摩擦係数を計算した.はじめに,静的接触角とスリップ長を分子動力学計算より求め,これらを入力とした連続体計算と行った結果,仮に連続体計算の接触線摩擦をゼロとした場合でも分子動力学計算の濡れ速度が連続体計算のそれよりも速くなることが分かった. 次に,MKT理論を通じて分子動力学計算から直接的に接触線摩擦を求める手法を実践した結果,例えばグラフェン上ではOh数が1以下となり,慣性力が支配的になることがわかった.
各種平滑表面の液滴の濡れ半径を見ると,固体面の濡れ性によって動的濡れ挙動が明確に異なることがわかった.一方で,濡れ半径を平衡濡れ半径で規格化し,時間を慣性スケーリングで規格化すると濡れ半径の時系列は同一曲線状に一致した.これにより,本研究における濡れ現象は表面の濡れ性に依らず慣性支配であることがわかった.
さらに,欠陥を設けた表面上での,液滴の濡れ半径の時系列を調べた.欠陥は表面層のグラフェンに異なる大きさの四角形の穴を等数密度で空けることによってモデルした結果,下地が銅の場合は初期の濡れ挙動は欠陥の大きさに依存しないことが明らかになった.一方で,下地がグラファイトの場合は濡れ挙動が欠陥の大きさに依存することがわかった.
次に,金/SAM膜/水の系において界面熱輸送について,温度依存性のメカニズムを明らかにするべく,界面近傍の水の層構造や分子振動の状態密度の変化や異方性を評価した. SAMとの界面近傍の水の密度を詳細に評価したところ,撥水表面ではSAMと水の間に隙間が空いているため,分子の運動エネルギーによって空間に進入する水分子の数が大きく異なり,その結果密度が温度に強く依存することがわかった.一方,親水温度依存性は界面でのSAMと水の距離が近いため,密度は高止まりした.
【研究代表者】
【研究種目】特別研究員奨励費
【研究期間】2014-04-25 - 2017-03-31
【配分額】2,300千円 (直接経費: 2,300千円)