分子動力学に立脚したナノ・ラボラトリ-の構築
【研究分野】知能機械学・機械システム
【研究キーワード】
分子動力学 / ナノラボラトリ- / 微小接触 / 微小摺動 / 微小塑性流動 / 電子顕微鏡
【研究成果の概要】
本研究は、分子動力学の理論を確認するための精密実験システム、すなわちナノラボラトリ-を構築することを目指す。本システムは、互いに異なる幾何形状や相対速度を持つ原子同士の相互作用を測定するものである。しかし、物理現象が微細であるにもかかわらず、実験者の実験中での判断・知識化を重視し、これらを動画像・力データ・発生音などで援用する機能を有している。この機能が本システムを試験装置ではなくラボラトリ-と称する理由であり、従来の測定装置のように、人間を疎外して試験後のデータを提示するだけのものではない。具体的には、電界放射形走査形電子顕微鏡内に配する精密実験装置の設計・製作と、分子動力学による理論計算とを、平行して行なって比較する。微小な物理現象として、1)セラミックスや金属から成る針状の試料が、カーボンや金から成る板状の試料の上を、直径0.1μm以下の微小な真実接触点を有しながら摺動した場合の両者の変形、2)0.05μm以下と微小な距離で相対しながら、1m/sの相対速度で動く2つの平滑な固体面間に存在する気体の圧力、3)0. 05μm以下と極めて鋭利な刃先をもつ単結晶ダイヤモンドが、0. 1μm以下の微小な切込で切削する時の純アルミニウムの塑性流動、4)双晶変形を行うニッケルチタン合金の平滑面に、直径100nmの押し込み穴を作成した後、熱を加えて再び平滑面に戻る時の再変形、を測定した。この結果、現在のコンピュータでは、分子動力学で数万個の原子の数fs間の挙動を計算するのに少なくとも約1日要するため、実験と計算との整合性を検討するには、実験する範囲をさらに数10nmと微小にすることが必要であることがわかった。しかし、ナノラボラトリ-の設計基本コンセプトは妥当であり、実験者の知識化を支援することで、定性的には微細な物理現象が解明できることがわかった。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
松本 洋一郎 | 東京大学 | 大学院・工学系研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
畑村 洋太郎 | 東京大学 | 大学院・工学系研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】一般研究(B)
【研究期間】1994 - 1995
【配分額】1,300千円 (直接経費: 1,300千円)