き裂の伝播挙動を支配する法則の解明(正弦波状き裂、らせん状き裂を例として)
【研究分野】機械材料・材料力学
【研究キーワード】
き裂 / 破壊 / き裂伝播 / ガラス / 正弦波状き裂 / 脆性破壊 / 弾性 / 連続分布転位法 / らせん状き裂 / き裂伝播速度
【研究成果の概要】
本研究では、破壊現象を材料の切断・割断加工に応用するために、き裂の伝播径路を自由にコントロールできるよう、「き裂の伝播径路を支配する法則」を解明することを最終目的としている。今回はこの研究の一環として、古くから知られた、(I)一様に熱したガラス平板(円管)を冷水中に徐々に沈下させる際に生ずる正弦波状き裂(らせん状き裂)、(II)ガス輸送管が破壊する際に観察される正弦波状き裂に着目し、その伝播挙動を調べ、メカニズムを考究することを目的として実験および理論解析を行った。その結果、(I)については、沈下速度および加熱温度が大きい程正弦波状き裂の波長が短くなる等の知見を得た。また、熱応力解析の結果、き裂は水面下では水面に対して垂直に伝播しようとするが、水面よりも上では水面に平行な方向に曲がろうとする傾向があることが判明した。なお、今回使用したガラス円管は靭性が高く、らせん状き裂を発生させるには至らなかった。次に、(II)については、水槽中でガラス円管を水圧による内圧により破壊させる実験を行い、以下の知見を得た。1.ガラス円管でも正弦波状き裂が発生するのでその発生メカニズムには塑性変形は関与していない。2.き裂伝播速度が概ね100m/s以下のときのみ正弦波状き裂が発生し、200m/sを超える高速伝播の際は正弦波状に伝播しない。このことは正弦波状き裂の発生メカニズムには動的効果が関与していないことを物語る。3.試験片寸法、き裂伝播開始時の水圧等の値に関わらず、正弦波状き裂の波長、振幅はそれぞれ円管直径の約4倍、4割となっている。4.モードIII型せん断荷重によりき裂の伝播方向が円管の軸方向から傾く。また、連続分布転位法による弾性解析の結果、5.正弦波状き裂の発生要因として、き裂の干渉効果や多軸応力効果が重要であることが示唆された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
塩谷 義 | 東京大学 | 大学院・工学系研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
佐藤 勝彦 | 東京大学 | 大学院・工学系研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2002 - 2004
【配分額】15,100千円 (直接経費: 15,100千円)