強誘電性液晶の構造と分子運動
【研究分野】応用物性
【研究キーワード】
強誘電性液晶 / 表面安定化状態 / スイッチング過程 / 配向制御 / 分子設計 / ジグザグ欠陥
【研究成果の概要】
ディテプレイに密着したシステム・デバイスの立場からは, セル特性をメモリー性, コントラストや透過光量, 応答速度などで評価する. パルス電界を印加して, 光の透過光強度の時間変化を観測する. 本研究班においても小林および内田はこのようなアプローチにより配向膜やラビング法に関し有益な知見を得ている. 女川と宮下は, やゝ異なった手法により, 各種斜方蒸着や高分子薄膜による分子配向制御を検討している.
物理の立場からは, セル構造を明らかにし, スイッチング挙動を理解して, あるべき姿を描こうとした. 好村はX線回折により層構造に関する有益な知見を得ている. 赤羽は分極電荷の重要性を考慮し, スイッチング過程を詳しく解析している. 石橋は誘電異方性の高電場域における影響を明らかにし, 新しいモデルに基づく解析を試みている. 竹添, 福田はジグザグ欠陥と内部回位に着目してそれらの構造を解明し, 自発分極が基板に平行な安定状態を見出して, 好村によっても確認された層の「く」の字構造および赤羽の理論との関連を論じている. 甲斐, 今崎は核生成に注目してドメインの反転過程を実験的に研究し, 1次元に近い2次元系の強い異方性をもった過程と結論している.
化学の立場からは分子が当然問題となる. セルの構造・物性と分子構造との関係を明らかにするのが目標であるが, 分子間相互作用が絡んだ複雑な現象なので, 基礎的データの集積が重要である. 艸林は根源に立ちかえって, SC*相の出現と構造との関係を化学合成の手段を駆使して系統的に研究し, 木村はSC相で分子長軸方向が層法線方向からなぜ傾くかを理論的に考察している. 吉野はビフェニル系の強誘電性液晶において自発分極の符号が温度により反転することを見出し, 分子構造との関連について考察している. 丸山も高周波誘電率の測定など高度の技術を駆使して分子回転を研究している.
【研究代表者】