電気化学界面を用いた強い電場下での新物質合成
【研究キーワード】
新物質合成 / 超伝導 / 電気化学界面 / イオン液体 / 薄膜
【研究成果の概要】
本研究は新物質合成の新しい手法としての電解液と固体の電気化学界面に着目し、その場での新物質や新物性を開発しようとするものである。そのために、(1)計算科学の手法をもちいた物質の安定性のエネルギー的な評価、および電気化学界面の分子動力学法による安定性の評価(2)元素単体でできた二次元物質を用いた高性能なトランジスタの実現、(3)超伝導体を中心とする遷移金属化合物薄膜研究を行ってきた。
(1)の計算については、3d遷移金属のカルコゲナイトである層状構造をもつMTe2について網羅的に安定性の評価を行い、従来ほとんど合成された報告のない CoTe2, NiTe2 について、ほかの競合する構造(パイライトやマルカサイトなどの三次元構造)とほぼ同じ結合エネルギーを持ち、界面エネルギーを使って薄膜として合成すれば安定な物質合成が可能であることを見出し、後で述べるように実際に合成に成功した。一方、MnTe2,FeTe2などでは計算上も実験上も合成は不可能であった。
(2)についてはゲルマニウムの二次元層物質であるゲルマナン(GeH)について、従来から報告されていた電子側だけでなく、ホール側についても低温でゲルマニウム単体をはるかに上回る数千cm2/Vsの移動度を示すことを見出した。今後は極低温での二次元電子ガスの実現を目指していく。
(3) については強いスピン軌道相互作用が期待されるカルコゲナイト層状物質 CoTe2, NiTe2 の薄膜の合成に成功し、さらに格子定数を変化させることでバンド構造に歪を加え、フェルミエネルギーを変調させることに成功した。また、遷移金属酸化物 SrNbO3 極薄膜において電場なしでも強いラシュバ型スピン軌道相互作用を観測した。今後、こうした物質に強電界を加えることで新物性の実現を目指していく。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)