強結合励起子凝縮系物質のプリフォームドペア状態と非平衡ダイナミクスの理論
【研究キーワード】
励起子絶縁体 / 励起子凝縮 / 非平衡ダイナミクス / 強相関電子系 / プリフォームドペア / 物性理論 / 強相関系 / プリフォームド・ペア
【研究成果の概要】
本申請代表者グループの励起子凝縮に関するこれまでの理論研究を背景に、本研究の目的は次の3点を明らかにすることである。すなわち、① 熱的純粋量子状態に基づく変分クラスター近似を用いた強結合励起子凝縮機構の解明 ② 時間発展ランチョス法・時間依存密度行列繰込み群法による励起子相の非平衡ダイナミクスの解明 ③第一原理計算とその解析に基づく低エネルギー有効電子模型の導出。これらにより、超伝導と並ぶフェルミオン対凝縮系としての励起子凝縮の物理の学理を深化させる。この目的を達成するため、研究分担者と協力者を3チームに分け、計画の4年間で強結合励起子絶縁体の特異性を明らかにし、有限温度量子多体系における秩序と揺らぎという歴史的大問題にひとつの解答を与え、さらにはフェルミオン対凝縮系の非平衡ダイナミクスという未踏の問題に糸口を見出す。
令和2年度は、励起子凝縮の学理の深化のための出発点を構築した。新型コロナウィルス感染症の予期せぬ拡大により研究活動が様々な側面で大きく抑制されたため、研究期間の1年間の延長を申請し認められた。その結果、次のような研究実績を得ることができた。研究代表者チームは、非平衡グリーン関数による摂動論的解析手法に加え、強相関電子系に対する非摂動論的な量子クラスター法を中心とする数値計算手法を開発した。また、低エネルギー有効模型の導出を行い、物質に即した理論を構築する基礎を得た。研究分担者チームは、関係する種々の強相関電子模型の非平衡ダイナミクスを研究し、光励起による強相関電子系における非平衡ダイナミクスや光誘起相転移に関する研究手法を発展させた。また、強結合励起子系の有限温度における一般理論を構築するため、熱的純粋量子状態に基づく変分クラスター近似の計算手法を開発した。研究成果は幾つかの学術論文として出版し、国内外の学会等で発表した。
【研究代表者】