ラジカルイオンの可視光スイッチ機能による多量応答分子系の開発
【研究分野】工業物理化学
【研究キーワード】
放射線化学 / 光化学 / レーザー光化学 / パルスラジオリシス / ラジカルイオン / 可視光スイッチ機能 / 多重応答分子 / 光応答 / レーザーホトリシス / スチルベン / 1,6・ジフェニル-1,3,5ーヘキサトリエン / 可視光スイッチ / 光機能性 / 放射線化学反応 / ラジカル イオン
【研究成果の概要】
ラジカルイオンは可視光領域に強くシャープな吸収を持ち、また構造や置換基の種類によってその吸収が変化するので、光応答分子に要求される半導体レーザー感受性や高感度非破壊読み出しの達成が本質的に可能であり、同一分子により中性分子、ラジカルカチオン、ラジカルアニオンと三重のメモリーが可能である。そこで、電子線パルスとNd:YAGレーザーの同期発振システムを使用し、ラジカルイオンを作業物質とすることによって、ラジカルイオンの可視光スイッチ機能による新しい多重応答分子系の開発を目的として研究を行った。具体的には、シススチルベンートランススチルベンのラジカルイオンの片道光異性化による光応答や、ピレンラジカルアニオンの光励起状態からビフェニルなどの消光剤への分子間電子移動消光による光応答、1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエンや1,6-ジフェニル-1,3,5-ヘキサトリエンのラジカルカチオンの光異性化による多重応答について検討し、芳香族化合物のラジカルイオンの光単分子反応の速度、量子収率、励起光波長依存性、媒体依存性について明らかにし、ラジカルイオンによる可視光応答機能を検討した。その結果、ラジカルイオンの可逆光反応を用いたフォトンモードによるメモリーの高密度化の可能性、および、同一分子あるいは不安定分子(ラジカルイオン)による多重型メモリーという新しい概念を提案した。また、電子線パルスを照射した後の適当な時間領域のみでレーザーによるラジカルイオンの光応答が可能であり、電子線パルスゲート型光応答系の開発の可能性を示唆した。さらに、ラジカルイオンの可視光スイッチ機能による新しい多重応答に適した分子系を設計し、それらを合成し、合成した分子系を使用して検討し、ラジカルイオンを使用することによる、可視光を情報源とする高信頼性・高速応答性の光応答性分子材料への展開の可能性が示唆された。
【研究代表者】