表面局在構造解析のためのSTM型表面電子顕微鏡の試作
【研究分野】金属物性
【研究キーワード】
走査トンネル顕微鏡 / STM / 超高真空電子顕微鏡 / グラファイト / 表面構造 / STM型超高真空電子顕微鏡 / 表面再配列構造 / 表面局在構造解析
【研究成果の概要】
走査トンネル顕微鏡を透過型電子顕微鏡に組み合わせて表面構造の解析を行なう新しい手法の開発を試みた. われわれは, 超高真空・高分解能電子顕微鏡を開発し, 表面構造を原子レベルで明らかにしたり, 吸着の初期段階の動的過程の観察を行なってきた. この手法では, 表面の広い領域にわたって秩序構造や乱れた構造を見ることが可能である. 一方, 走査トンネル顕微鏡(STM)では, 表面の原子配列だけでなく, 電子状態までも見ることが可能であるのだが, 観察視野が狭い範囲に限られてしまう. そこで, 双方を組み合わせて互いに相捕的に用いることにより, 表面構造の解析が格段に進むことが期待される. 本研究では, 電子顕微鏡装置に組み込める形のSTM駆動機構を作って, その動作状態を調べ, 安定に動作するSTMの試作を行なった. 具体的には, 1)STMの探針をドライブするビエゾ素子を選択し, 2)ビエゾ素子ドライブを小型化するために, ずれ歪を利用した方式を採用し, 3)表面相転移の観察のため, 試料の加熱が出来る機構を組み込んだ. また, 4)探針の先端形状を電子顕微鏡観察して, STM観察に適当な探針の材料, 加工方法について, 検討を行なった.
その結果, 現在のところ, 黒鉛(グラファイト), モリブデナイト, PbSのへき開表面についてSTM観察を行い, 表面原子による凹凸像が得られる段階にまでなった. ビエゾ素子のドライブ範囲は最大 250Aである. 相転移など表面の動的過程の研究には, 速い走査速度のドライブが必要であるが, 現在のところ, 一画面を得るのに10秒以上かかる. この速さは, 国内の他のものと比べると決して遅くはないが, より速い速度が, 将来, 必要となろう.
【研究代表者】
【研究分担者】 |
近藤 行人 | 日本電子株式会社 | EMG | 研究員 |
原田 嘉晏 | 日本電子株式会社 | EMG | 部長 |
谷城 康真 | 東京工業大学 | 理学部 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】試験研究
【研究期間】1986 - 1987
【配分額】14,000千円 (直接経費: 14,000千円)