水素修飾で実現する高転移温度を持つ原子層超伝導体
【研究キーワード】
超伝導 / カルコゲナイド / 原子層物質 / 界面超伝導 / 薄膜 / 水素 / チタン酸ストロンチウム / 2次元超伝導 / 2次元物質 / 酸化物半導体 / 水素化 / 水素修飾 / SrTiO3 / ペロブスカイト / 鉄系超伝導 / 電子フォノン相互作用
【研究成果の概要】
本研究では、二次元超伝導FeSeについてその薄膜の作製と電気伝導による評価によって超伝導 の性質を調査するものである。具体的には、FeSe/SrTiO3(STO)の界面が超伝導特性に重要であると考えられているため、STO表面におけるデバイ振動数を増加させれば超伝導転移温度Tc を増大させることができるのではと考えた。方法としては軽い元素の水素を修飾することによって界面のデバイ振動数を増加させることを計画した。要素技術として我々は、STO表面に水素を修飾させる技術を開発した。これによりSTO表面が水素原子によって覆われ水素からの電子ドープによってSTO表面が半導体的挙動を示すことを発見した。これを踏まえこの表面にFeSe薄膜を作製すればFeSeとSTOの界面に水素原子を導入することができる。ただ、FeSe自体の超伝導観測もハードルが高く、まず膜厚が1~数原子層程度であることから大気暴露ができないこと、超伝導に影響を与えないキャップ層の形成が難しいこと、抵抗率が低いため 電気伝導率の測定装置を含めた全体的なシステムの開発が必要であることなどが挙げられる。また超伝導実現のためにはSTO表面の化学的・熱的処理が必要でありその最適化も重要である。このため我々は良質な単結晶FeSe薄膜作製の技術開発から行った。また電気伝導測定は超高真空中で行うために、専用の装置(独立駆動4短針STM)を用意した。結果として、STO表面を原子レベルで平坦にすることに成功し、またその上に良質なFeSe単結晶薄膜を作製することに成功した。また電気伝導測定も行い特性を調べたが、降温に伴って抵抗の低くなる金属的な挙動が得られており、超伝導化にはさらなる条件最適化が必要であることが分かった。今後更に条件を詰めて早いうちに超伝導観測と、界面の水素化による影響を調べていきたい。
【研究代表者】
【研究種目】挑戦的研究(萌芽)
【研究期間】2018-06-29 - 2023-03-31
【配分額】6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)