膜蛋白質3次元微結晶の電子線構造解析
【研究分野】生体物性学
【研究キーワード】
膜蛋白質 / 蛋白質の結晶化 / バクテリオロドプシン / 電子線構造解析 / プロトン輸送 / 生体膜 / 電子顕微鏡 / 電子線回折
【研究成果の概要】
膜蛋白質の新しい構造解析法の確立を目指して,(1)膜蛋白の結晶化技術の開発・改良,(2)3次元結晶の電子線回折像から膜蛋白質の立体構造を求める方法の開発,の2点について研究した。(1)に関しては,光プロトンポンプとして知られるバクテリオロドプシンの結晶化を試み,3種類の微結晶を得るのに成功し、目標を達成した。また、温度勾配存在下で蒸気拡散を行なう新しい蛋白質結晶化法を開発し、結晶化プロセスの迅速化を検討した。(2)に関しては,厚さが数百ナノメ-トルの結晶でも電顕像を記録できることを実証した。バクテリオロドプシンの3種類の結晶のうち特に針状結晶の構造解析を行ない,結晶内の蛋白質の配列に関する情報を得ることができた。一方,微結晶の電子線構造解析を行なう上での種々の困難も明らかとなった。理論計算の結果によると微結晶の厚さとともに分解能が良くなるとは限らず、ある値以上になるとむしろ得られる分解能は低下することが示唆された。したがって,アトミック・レゾル-ションで構造決定を行なうには、薄い板状結晶を用いる必要がある。もう一つの問題点は、3次元結晶化に用いる沈澱剤が良質の電顕像を得ることを妨げることである。膜蛋白質の結晶は極めてデリケ-トで、溶媒条件を変えるとすぐに壊れてしまい,溶媒の置換は容易でないことも明らかになった。できた結晶を安定することも試みているが、今のところすぐれた方法を見いだせないでいる。今後の課題として、(1)電顕構造解析に適した板状の3次元結晶を作成する技術を開発すること,(2)3次元微結晶の固定法を開発すること,の2点をあげることができる。これらの点が達成できれば,電子線構造解析は膜蛋白質の構造決定法として広く用いられるようになるものと期待できる。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
豊島 近 | 東京工業部学 | 理学部 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】一般研究(C)
【研究期間】1990
【配分額】1,800千円 (直接経費: 1,800千円)