伝導度計測に基づく単一分子スケールにおける表面電位三次元計測法の開発
【研究キーワード】
単分子接合 / STM / 電気化学 / 電気二重層 / DNA
【研究成果の概要】
近年,ナノ科学・テクノロジーへの興味の高まりを背景に,優れた機能を有するnmスケールの微小構造体が盛んに開発されている.これに伴い,微小構造体の化学的特性,物性の計測を可能とする,高い空間分解能を有する分析法が強く求められている.固体最表面に対しては原子スケールにおける計測法が精力的に開発されている一方,高さ方向に空間分解能を有する計測法は未踏領域として残されている.そこで,本研究では,多岐にわたる化学現象に関与する表面電位に着目し,電極最表面だけでなく,高さ方向にもサブnmオーダーの空間分解能を有する表面電位の三次元計測法を開発することを目的とする.
開発する手法では,単分子電位計を開発しこれをDNAに結合させることにより表面からの高さを規定し,高さ分解能を実現する.当該年度は,足場となるDNAの伝導特性,および電極への結合様式について検討した.従来,DNAの単分子接合は,DNAの両端に電極結合性官能基を導入することにより作製されている.本結合様式ではDNAの鎖長の増加に対して伝導度が急激に減少する欠点がある.そこで,DNAの末端の一方のみに2つの結合性官能基を導入した結合様式にてDNA単分子接合を形成しその伝導特性を計測した.その結果,DNA鎖長を増加させても伝導度が減少しない接合を実現することができた.電気伝導がDNAの一端のみを経由して生じるため,鎖長依存性が見られなかったものと考えられる.また,その接合は部分的に破断してもDNAの相補鎖形成により自発的に修復する特性を示すことを見出した.現在,単分子接合を利用した多様な単分子素子が開発されているが,その寿命は室温では10 msの桁である.今回の研究で見出した自己修復性は単分子接合の脆弱性を解決し得るものであり,単分子素子の実用化に大きく貢献できるものと期待できる.
【研究代表者】
【研究分担者】 |
藤井 慎太郎 | 東京工業大学 | 理学院 | 特任准教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2021-04-01 - 2025-03-31
【配分額】17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)