モード選択的振動励起による物質操作法の開拓
【研究キーワード】
中赤外波長域 / 超短パルスレーザー / 多段階振動励起 / 化学反応制御 / レーザー加工 / 赤外レーザー / 振動分光
【研究成果の概要】
中赤外超短パルスレーザーを用いると,特定の分子振動モードを選択して強い振動励起を実現できる。これは、特定の化学結合にエネルギーを供給できることを意味する。本研究では、この「モード選択的な励起」を通して化学反応制御や有機材料加工を達成する手法およびその基礎をなす学術を開拓する。これは、これまで振動分光計測に重宝されてきた中赤外光の、『物質操作ツール』としての価値を顕在化させる挑戦でもある。
初年度は、中赤外波形整形パルスによる多段階振動励起の理論解析に取り組んだ。分子の量子状態に関する密度行列の時間発展を数値的に計算するコードを開発し、赤外パルスの電場波形およびフルエンスに応じた振動励起ダイナミクスの予測を行った。また、中赤外パルスによる多段階振動励起実験のためのポンプ・プローブ分光測定系を開発した。具体的には、対象分子を封入する試料セルを設計・製作するとともに、中赤外パルスによって試料を励起し、その後の透過率変化を100フェムト秒の時間分解能で計測するシステムを開発した。
当該年度は、実際に赤外ポンプ・プローブ分光法による気相分子の振動・回転励起ダイナミクスの観測に取り組み、振動励起に伴う吸収スペクトル変化の観測に成功した。その様子は、理論計算による結果とも良い一致を示した。
並行して、電極反応における中間体・生成物の分子レベルでの理解を目指し、金属ナノ構造の表面プラズモンを利用した、電極表面を高感度かつ高い時間分解能で計測できる新規赤外分光法の開発に着手した。
【研究代表者】
【研究種目】挑戦的研究(開拓)
【研究期間】2020-07-30 - 2023-03-31
【配分額】26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)