高強度レーザー場中の多電子ダイナミクスの量子・古典ハイブリッド計算
【研究キーワード】
量子コンピュータ / 電子ダイナミクス / 時間依存ユニタリ結合クラスター
【研究成果の概要】
2018年ノーベル賞受賞のレーザー技術に基づくアト秒科学は、光反応最初期過程の電子ダイナミクスの直接観察・制御を目指す。その実現には多電子ダイナミクスの信頼できる計算方法が必要だが、量子多体系特有の組み合わせ爆発の問題が伴う。 本研究の目的は、高強度レーザー場中の多電子ダイナミクスのための、NISQ量子コンピュータを用いた量子・古典ハイブリッドアルゴリズムを開発し、実機を使用して現実の問題における最初のアプリケーション成功例を示すことである。時間に依存しない量子化学がNISQ量子コンピュータのキラーアプリケーションであるという認識は広く共有されているが、量子コンピュータの時間依存量子系への適用は簡単なモデル系に留まっている。これに対し本研究は、現実世界の現象であり、アト秒科学で重要な高次高調波発生のシミュレーションに実機量子コンピュータを適用するチャレンジングな提案である。この課題に、申請者が開発してきた時間依存多電子理論にNISQアルゴリズムを組み込み、多体量子情報(一体量子情報)の時間発展を量子コンピュータで(古典コンピュータ)で計算するという戦略で挑む。
2021年度は、古典コンピュータで計算する電子の軌道関数と、量子コンピュータで計算する量子回路パラメータを両方とも時間発展させる時間依存最適化ユニタリ結合クラスター法(TD-OUCC)の世界初の開発に成功し、量子回路エミュレータを用いた数値検証を行った。高強度フェムト秒パルス(波長800 nm、強度4×1014 W/cm2)をHe原子【J. Phys. B: At. Mol. Opt. Phys. 47, 204031 (2014) 】に照射するシミュレーションを行なったところ、高次高調波発生を精度よくシミュレーションできることがわかった。
【研究代表者】
【研究種目】挑戦的研究(萌芽)
【研究期間】2021-07-09 - 2023-03-31
【配分額】6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)