マイクロ波顕微鏡を用いた単一磁束量子ダイナミクスの実時間計測
【研究キーワード】
マイクロ波顕微鏡 / フラックスフロー / ホール効果 / 鉄カルコゲナイド / BdG方程式 / フラックス・フロー / 磁束量子 / 超伝導 / 摩擦の物理 / スペクトロスコピー
【研究成果の概要】
本研究は,摩擦によるエネルギー損失の減少を大目標とし,界面摩擦と同じダイナミクスに従う超伝導体磁束量子格子をモデル系として利用して問題攻略の糸口を探るのを大目的とする。具体的には,磁束量子が運動状態でも欠陥等のランダムネスや相互作用を通じて受ける複雑な動的ピン止め過程の詳細を理解することを目的として,マイクロ波顕微鏡を導入し,運動する磁束量子一本がピン止め中心との相互作用で周辺に引き起こす局所電流密度変化を実時間計測し,その変化が周辺の磁束量子へ散逸する過程の詳細を克明に記録することで当初目的を達成する。本年度は,以下を実施した。
(1)低温動作マイクロ波顕微鏡について,これまで作製・利用してきたSTM型を解体し,AFM型への改造を行った。昨年度の実績報告の段階で,室温でトポ像並びに複素伝導度像が測定できるようになっていたが,本年度は液体ヘリウム温度でトポ像並びに複素伝導度像が測定できるようになった。これにて低温動作マイクロ波顕微鏡は一応の完成を見た。
(2)FeSeバルク単結晶を気相成長法にて作製し,十字型共振器を用いたフラックスフロー・ホール効果の測定を継続した。その結果,実効粘性係数測定とホール角の大きさ並びに磁場依存性が異なるという非常に興味深い結果を得た。現在この解釈とともに論文を準備中。
(3)PLD法で作製した一連のFeSe1-xにおいて,マイクロ波顕微鏡でトポ像,常伝導状態並びに超伝導状態の複素伝導度像の測定を開始した。
(4)時間に依存するギンツブルグ・ランダウ方程式により孤立量子渦のフロー状態における駆動力を求め、その起源を明らかにした。また2次元系におけるPearl型量子渦や3次元系における曲がった量子渦にかかる駆動力を解析的に求めた。また鉄系超伝導体FeSeを念頭にBogoliubov-deGennes 方程式に基づく時間発展方程式のコードを作成した。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
加藤 雄介 | 東京大学 | 大学院総合文化研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】挑戦的研究(萌芽)
【研究期間】2020-07-30 - 2023-03-31
【配分額】6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)