MOCVD結晶成長による量子ドットの自己組織化形成と埋め込み平坦化に関する研究
【研究分野】応用物性・結晶工学
【研究キーワード】
InGaAs量子ドット / 自己組織化 / 垂直共振器型面発光レーザ / 第一サブバンド
【研究成果の概要】
減圧MOCVD法を用いた自己組織化形成によるInGaAs量子ドットの作製を行ったとき、成長温度500℃で直径20nm高さ5nmの比較的良好な量子ドットの形成が得られている。これを半導体レーザなどに応用する時にはドットを埋め込む層の形状が問題となってくる。ここでは、平坦化に関する研究を行ない、面発光レーザの作製を試みた。そして、以下の知見を得た。
1.埋め込み層にGaAsを用いて量子ドットを埋め込む場合、温度の高い方が結晶の平坦化が促進された。これは、低温では結晶表面での原子の拡散距離が少なく、高温においては原子の拡散距離が長くなるためである。但し、高温で埋め込む時、その初期に、量子ドットの表面は露出しており、温度上昇による再蒸発のため消失してしまう。量子ドットの表面を覆ってから高温埋め込み行う工夫を行った。
2.埋め込み条件が500℃、低砒素圧(砒素分圧2.2×10^<-5>torr)では量子ドットを核とした成長が行われ、面方位による成長レート違いにより細長い形の埋め込み層が現れる。同一温度で高砒素圧(砒素分圧5.5×10^<-4>torr)以上になると面方位に関係のない成長に変わり表面は平坦化される。しかし、結晶表面に原子層ステップが観測されず、1原子層程度の平坦性は得られず、緩やかな曲面である。
3.成長レートの違いにおいては、成長レートの遅い場合がより平坦化が進む。成長レートが早い場合は原子の結晶表面での拡散距離が制限されるためと考えられる。
4.量子ドットの多重化成長も行った。断面のSEM観察では、数層成長した後でも量子ドットの存在は確認できた。しかし、AFMによる表面観察でドット密度の減少が観察された。
5.これらの知見を基に、量子ドットが1層である垂直共振器型面発光レーザ構造の作製を試みた。強励起において第一サブバンドからのレーザ発振(波長985nm)を確認した。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】1996
【配分額】1,800千円 (直接経費: 1,800千円)