電荷移動型材料による機能性有機半導体界面の形成と高性能有機トランジスタへの応用
【研究分野】応用物性・結晶工学
【研究キーワード】
有機トランジスタ / 分子性導体 / 電子デバイス・機器 / 表面・界面物性 / インクジェット印刷 / 電極界面
【研究成果の概要】
本研究では、共役パイ電子を持つ二種の有機分子の複合体である電荷移動型材料を利用して、有機トランジスタ(FET)の高度化・実用化に不可欠となる有機半導体の機能性界面形成技術の開発を行うことを目的とした。2年間にわたる研究期間において、高移動度材料の開発、有機金属電極のインクジェット印刷法の開発、および分子性半導体薄膜のモルフォロジー制御に成功した。以下に得られた研究成果の概要を述べる。
(1)高移動度チャネル材料開発:分子性導体の構成要素として知られるTTF系分子材料の中から、HMTTFをチャネルとして用いた単結晶FETが、10cm2/Vsを超える高い移動度を示すことを見出した。またこのような良好な素子特性を得る上で、TTF-TCNQ薄膜によるソース・ドレイン電極を用いてキャリヤ注入効率を最適化することが本質的に重要なことが分かった。
(2)分子性導体薄膜のインクジェット印刷:分子性導体薄膜を印刷法によって作製する技術を開発するため、分子性導体を構成するドナーとアクセプターそれぞれのインクを個別に基板上に吐出し、基板上で導電性薄膜をその場合成するダブルショット・インクジェット法を開発した。これにより作製したTTF-TCNQ薄膜は10 S程度の低い面抵抗を示すとともに、これをソース/ドレイン電極とするペンタセン薄膜トランジスタは、低電圧領域で鋭いオン/オフ間のスイッチング動作を示すことが分かった。
(3)分子性半導体薄膜の界面エンジニアリング:薄膜を成長させるSi02表面をHMDSにより十分に疎水化することにより、30マイクロメートル以上に及ぶ巨大なグレーンを有するDBTTFが成長することを明らかにした。また基板の疎水性を減少させるとグレーンサイズが減少し、それとともに有機薄膜FETのサブスレッショルド素子特性が系統的に変化することを見いだした。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
山田 寿一 | 独立行政法人 産業技術総合研究所 | 強相関電子技術研究センター | 主任研究員 | (Kakenデータベース) |
中村 貴義 | 北海道大学 | 電子科学研究所 | 教授 | (Kakenデータベース) |
斎藤 軍治 (齋藤 軍治) | 京都大学 | 理学研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2006 - 2007
【配分額】16,310千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 1,710千円)