中性子を用いたスピン流-熱電変換プロトタイプ物質のマグノン分散及び寿命の決定
【研究キーワード】
スピントロニクス / スピンゼーベック効果 / マグノン / 磁性ガーネット / 中性子散乱 / スピン流
【研究成果の概要】
本研究では、磁性ガーネット群の磁気励起特性(分散関係・寿命)を中性子散乱を基軸とした検出法により調べ、これらの情報をもとにスピンゼーベック効果(SSE)の信号特性を理解することを目指した。本研究を通じて、Y3Fe5O12(YIG)及び Tb3Fe5O12(TbIG)の磁気励起の全体像を解明することに成功し、LLG方程式に基づく理論計算と組み合わせることで、これら物質群のSSEの温度特性を説明可能であることを見出した。また、Bi-Ga置換のLuIG系において、低磁場域で巨大なマグノン-フォノン混成SSEを観測し、本結果が元素置換に伴うマグノン分散の変化と寿命低下によって理解できること示した。
【研究の社会的意義】
本研究により、物性物理学の重要概念である“素励起”という観点から、熱スピン変換現象を包括的に理解するための指針が得られた。絶縁体スピントロニクス分野の基盤材料であるイットリウム鉄ガーネットYIGのマグノン分極を初めて観測したことは意義深く、今後本手法を利用して、より複雑な磁気構造をもつ材料のマグノン分散・分極の検出が期待されている。また本研究を通じて、これまで関係性が希薄であった中性子などを利用する量子ビーム分野とスピントロニクス分野とが有機的に結合していくための端緒が開かれたと言える。
【研究代表者】
【研究種目】研究活動スタート支援
【研究期間】2019-04-01 - 2020-03-31
【配分額】2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)