液晶における分子の回転運動と反強誘電性の発現機構
【研究分野】応用物性・結晶工学
【研究キーワード】
液晶 / 強誘電性 / 反強誘電性 / 3安定状態間スイッチング / ディスピレーション / 悪魔の階段 / スメクティック層の秩序度
【研究成果の概要】
1.反強誘電性液晶の[スメクティック層〓基板]セルにおいては,分子長軸が基板界面と平行になろうとし,セルの中では螺旋構造をとろうとする。この不都合は,通常,基板に平行な縞状欠陥の出現により解消される。螺旋のピッチを特性反射で測定し,縞の間隔と比較して,この欠陥がディスピレーションであることを明らかにした。
2.束縛回転によって現われる時間平均的な双極子モーメントが隣接層間で対形成すれば,分子長軸の傾きは必ず同一面内に限定される。このような状況のもとでは,SmC_A^*とSmC^*との中間温度領域に見出される[悪魔の階段]が,長距離斥力で特長づけられる1次元イジングモデルで記述できる。典型的な化合物・混合物における副次相の構造を,現有の光学的手法により解明し,モデルの妥当性を明らかにしてきた。
3.現有設備である強力X線回折装置を使って,SmA,SmC^*,およびSmC_A^*のスメスティック層によるX線回折を2次,3次まで測定し,SmC^*やSmC_A^*の安定性と高次回折強度との相関を明らかにした。また,SmI_A^*の層間隔がSmAよりも大きくなることがあることを見出し,ヘキサティック相における反強誘電性の出現機構を考察した。
4.分子長軸まわりの回転状態に関する情報を得る目的で,ビコ秒領域における力一効果により回転緩和時間を測定できるように準備を進めており,3月中には完了する予定である。複屈折を誘起する励起光としてアルゴンイオンレーザ励起Ti:サファイヤモードロックレーザーを,また誘起された微小複屈折の計測用に光弾性モジュレータ(PEM)を購入し,調整中である。
【研究代表者】