共役系高分子の分子内キャリアダイナミックスの研究
【研究分野】応用物性・結晶工学
【研究キーワード】
共役系高分子 / 導電性高分子 / 電気複屈折 / 分子内電気伝導 / キャリア伝導 / 高分子形態 / ロッド-コイル転移 / π共役系高分子 / 高分子主鎖形態 / キャリア拡散
【研究成果の概要】
共役系高分子をはじめとする電子・光機能性高分子の電気伝導に関する研究は、従来主として固体バルク状態で行われてきたが、アモルファス域と結晶域が互いに入り混じった複雑な高次構造をとる固体中では、分子内と分子間のキャリア伝導を明確に区別することは困難である。そこで、我々は可溶性の共役系高分子を絶縁性の有機溶媒中に溶かし、分子分散させることにより、分子間伝導を完全に抑制することを考えた。このとき、高分子1本鎖に固有な、すなわち高分子の1次元性を顕著に反映する分子内キャリア伝導のみを溶液の誘電性の形で検出することが可能となる。本研究では、新しい誘電緩和スペクトロスコピーとしての電気複屈折緩和法を用いて、特に高分子主鎖形態と分子内キャリア移動との密接な関係を明らかにすることを目指した。
高精度・広帯域の電気複屈折緩和測定システムの開発を行い、その測定手法を代表的な可溶性の共役系高分子であるポリ(3-ヘキシルチオフェン)に適したところ、ポーラロンが共役構造の欠陥を越えながら高分子全長程度を拡散するために生じる低周波モードと、欠陥に囲まれたローカルな領域を拡散するために生じる高周波モードが存在することが明らかとなった。このように2種類のキャリア拡散機構が存在するのは1次元系における強い欠陥効果であると考えられる。また、後者の拡散定数は熱活性化型の温度依存性を示し、キャリアが1次元系に起因する強い局在化の影響を受けながら、分子内をホッピング伝導していることがわかる。さらに、ポリアニリンにおいても、酸化による主鎖形態変化と分子内キャリア伝導の関係が明らかとなった。
以上のように、動的電気複屈折緩和スペクトロスコピーは可溶性の共役系高分子一般の分子内キャリアダイナミックスおよび分子形態の観測に有効な測定手法であることが示された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
下村 武史 | 東京大学 | 大学院・工学系研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
木村 康之 | 東京大学 | 大学院・工学系研究科 | 講師 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1996 - 1997
【配分額】7,400千円 (直接経費: 7,400千円)