電場印加、電荷注入による熱伝導性変調機構の解明と新規熱伝導制御法の開発
【研究キーワード】
ナノスケール熱伝導 / 第一原理計算 / 表面フォノン / ナノ・マイクロ加工 / ラマン計測 / 二次元材料 / ラマン測定
【研究成果の概要】
外場によって誘起された機械的なひずみによる熱伝導性の変調など、想定していた因果関係とは異なる機構が発現する可能性がある。外場と機械ひずみの影響を分離するために、第一原理に基づいてグラファイト・インターカレーション化合物を対象に積層方向の面外ひずみによる熱伝導性の変調を解析した。面外ひずみを印加すれば積層間距離が短くなることから、面外方向の熱伝導はひずみに対して自然な振る舞いをする一方で、面内方向の熱伝導は材料に応じて異なる応答をすることが分かった。ひずみによる電子バンドの変調によって原子間の線形・非線形バネ定数が変わり、振動状態やフォノン輸送が変調されたことが異なる応答性の原因であると考えられる。より詳細な解析が必要であるが、この結果は外場とひずみの影響は完全に分離できないことを示唆していることから、外場による熱伝導性変調の大きさを適切に評価する手法が必要であることが分かった。
外場による熱伝導性の変調では二次元van der Waals積層系を対象としてきたが、ペロブスカイトなどの強誘電体材料でも同様の効果が期待される。三次元系を用いる際には外場による効果が消失しないよう薄膜化することが予想されるため、10 nm程度までの膜厚を有する極薄膜の熱伝導解析を実施した。膜厚と熱伝導に寄与するフォノンの波長が同程度となる薄膜においては、薄膜表面に局在するフォノン(表面フォノン)が存在することが予想されるが、本計算によって表面フォノンが表面フォノン以外のフォノンの輸送を強く抑制すること、また薄膜熱伝導のモデリングで広く用いられてきた理論モデルが適用できないことを明らかにした。薄膜構造によって表面フォノンの影響を制御できることから、薄膜表面に対してナノ構造化を行うことで、外場印加による熱伝導性変調を促進・抑制するなど、熱を自由に操るための制御方法の新しいストラテジを得た。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
児玉 高志 | 東京大学 | 大学院工学系研究科(工学部) | 特任准教授 | (Kakenデータベース) |
千足 昇平 | 東京大学 | 大学院工学系研究科(工学部) | 准教授 | (Kakenデータベース) |
岡田 晋 | 筑波大学 | 数理物質系 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)