d電子間に働く強い相互作用が生み出す酸素発生触媒の開発
【研究キーワード】
酸素発生反応 / 酸素発生触媒 / 金属-絶縁体転移 / 電子相関 / 金属空気電池 / イリジウム複合酸化物 / ペロブスカイト関連構造 / 水分解 / 金属ー絶縁体転移 / 複合酸化物 / 電子構造
【研究成果の概要】
金属-絶縁体転移の境界領域にあるペロブスカイト関連構造のBaIr1-xMxO3(Mは遷移金属)を固相法によって合成し、その結晶構造がBaIrO3と同一であることを確かめたうえで、その酸素発生触媒能を測定した。酸素発生触媒能の評価には、「触媒担持液を塗布した回転リング-ディスク電極」を用いて、固体高分子形(PEM)水電解セルへの応用を念頭に酸性電解液中(0.5 M H2SO4)で電気化学測定を実施した。酸素発生触媒能は過電圧と電流密度によって評価した。また、酸素発生反応に対する耐久性は酸素発生反応を1000サイクル繰り返した後の触媒能を1サイクル目の触媒能と比較して評価した。酸素発生反応前後のIrの価数はX線吸収分光法によって観察した。また、亜鉛空気二次電池の正極への実装も行った結果、BaIr1-xMxO3が多数回の充放電にも耐えうる電極触媒であることが確かめられた。
BaIr1-xMxO3(Mは遷移金属)は初期活性だけでなく耐久性においても、典型的な酸素発生触媒であるIrO2よりも高く、また反応の前後でIrの4価の一部が5価に酸化したものの、Irの価数はほぼ一定であり、酸素発生反応中のカチオンの溶出量が極めて少ないことが明らかになった。また、適切なMとxを選択すれば、BaIrO3と比較しても、BaIr1-xMxO3の触媒安定性が増強されるだけでなく、初期活性も増強できることが明らかになった。これは、母物質であるBaIrO3の構造安定性が十分に高いことに加えて、触媒表面の遷移金属イオンによって、BaIrO3以上に酸素発生反応に対して安定な表面が形成されたためと考えられる。これらの研究成果について、2022年5月開催の日本材料科学会 マテリアルズ・インフォマティクス基礎研究会において講演を行うことが決定している。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
八木 俊介 | 東京大学 | 生産技術研究所 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
大野 智也 | 北見工業大学 | 工学部 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)