前近代東アジア海域における交易システムの総合的研究
【研究分野】日本史
【研究キーワード】
東アジア地域 / 海上交通 / 博多 / 長崎貿易 / 琉球 / 済州島 / 銅座 / 東シナ海域 / 律令・礼典 / 財政 / 海賊 / 長崎実記年代録 / 東シナ海海域 / 交易モデル / 進貢貿易 / 海難漂流 / オランダ貿易 / 前近代 / 交易システム / 情報
【研究成果の概要】
今回の研究による新たな知見の一部を以下に示す。
1.中世,博多を中心とする海上交通路について「海東諸国紀」を分析した佐伯は,田中健夫の説に日本海ルート・琉球直接渡海ルートを付加できると指摘する。前者は大内氏により瀬戸内海西部が閉鎖される1460年以降盛んとなり,後者は薩摩藩と琉球との不和が薩摩藩経由を直接渡海へ変えたとし.1450年代以降活発化することを明らかにした。
2.八百は,宝暦期以降,長崎の唐・蘭貿易において定高外の各種取引の対価に銅が利用されたこと,これは長崎奉行石谷清昌などによる改革で,私貿易であった脇荷取引が本方取引の中に組み込まれてた結果であることを指摘する。
3.真栄平は東シナ海域の海賊に関する文献目録を作成した。さらに豊臣秀吉の「海賊禁止例」により日本人の海賊行為,また江戸幕府の要請によりオランダ船の海賊行為もなくなるが、中国による海賊行為は続き,進貢船の自衛のため琉球は武装して対応した事実を明らかにした。
4.六反田はソウル大学所蔵『済州啓録』所収の18世紀半ばの済州島民の日本・琉球・中国への漂流・漂着事例50例の分析を行い,漂着の済州島民が出身地を詐称に関する池内敏の説を訂正し,済州島民の持つ朝鮮半島人と異なる意識は多彩な海上活動の展開と他国への接触の故であるとした。
5.岩崎は幕府勘定所と大坂銅座の関連について具体的に検討し,今後の研究の基礎史料となる『古河家覚書写』を翻刻した。
他の分担研究者も,それぞれのテーマごとに新たな知見を引き出し,それを発展させる土台を築いている。
【研究代表者】