オセアニア集団に観察される旧人からの遺伝子移入:オセアニア進出に寄与したのか
【研究キーワード】
オセアニア集団 / デニソワ / ネアンデルタール / 遺伝子移入 / オセアニア人 / 適応的移入変異 / 旧人 / オセアニア / 適応進化
【研究成果の概要】
現生人類の中で、旧人(ネアンデルタール人、デニソワ人)に由来するゲノムを最も多く保有しているのは、パプア人やメラネシア島嶼民などのオセアニア地域の人々である。ヒトはオセアニアへ二度進出しているが、旧人からの移入変異、特にエネルギー倹約型の移入変異がオセアニア地域への進出過程で適応的に作用した可能性がある。本研究では、オセアニアの代表的な集団(パプア集団、メラネシア集団、ポリネシア集団、ミクロネシア集団)を対象にゲノム解析を行い、(i)旧人からオセアニア人への移入変異、(ii)エネルギー代謝と関連する移入変異、(iii)適応的移入変異を調べ、ヒト進化遺伝学的視点から、オセアニアへの進出に寄与した旧人からの遺伝子移入の実態を明らかにすることを目的とする。
オセアニア集団を対象に旧人からの遺伝子移入領域を調べたところ、2番染色体のGCG遺伝子コード領域において、先行研究(Vernot et al., 2016)と同様に遺伝子移入の痕跡が観察された。特に、トンガではGCG遺伝子上のネアンデルタール人由来変異の頻度が当該領域で最も高かった。そこで、関連解析を行ったところ、GCG遺伝子領域中のネアンデルタール人由来変異rs34211565-Gは、トンガ人において中性脂肪値の減少と有意に関連していた(P-value=0.037)。
現在、他の遺伝子移入領域中に存在するSNPについて、パプア人約700名、メラネシア人約300名、ポリネシア人約150名、ミクロネシア人約100名を対象に、肥満・脂質代謝・糖代謝との関連を検討している。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)