X線結晶構造解析を用いたtRNAのアミノアシルtRNA合成酵素活性化機構の解明
【研究分野】生物物理学
【研究キーワード】
蛋白質合成 / トランスファーRNA / アミノアシルtRNA合成酵素 / X線結晶構造解析 / 校正反応 / 分子進化 / 高度好熱菌
【研究成果の概要】
高度好熱菌Thermus thermophilus由来のバリルtRNA合成酵素(ValRS)・tRNA^<Val>・バリルAMPアナログ3重複合体(分子量25万)の結晶構造を2.8Åで決定した(Cell2000;103:793-803)。木構造では、tRNAのアミノ酸受容末端がValRSのアミノ酸校正ドメインに特異的に認識されており、誤って活性化した非特異的なアミノ酸を校正する状態を示す最初の構造であり、tRNAの認識と連携した酵素のアミノ酸校正機構に関して全世界に先駆けて新しい知見を得た。また、高度好熱菌由来グルタミルtRNA合成酵素(GluRS)とtRNA^<Glu>の複合体の結晶構造を2.4Åで決定した(Nature Structural Biol.;3,in press).。GluRSには、生物種によって、tRNA^<Glu>(アンチコドンYUC^<36>)のみを認識する識別性GluRSと、tRNA^<Glu>とtRNA^<Gln>(アンチコドンYUG^<36>)の両方を認識するbifunctionalな非識別性GluRSがあるが、高度好熱菌由来GluRSは識別性GluRSである。本構造では、tRNA^<Glu>のアンチコドン3字目のC36がArg358により水素結合で認識されていたが、このArg残基をGln残基に置換することで、変異体GluRSは非識別性GluRSに変換されることがわかり、わずか1残基のアミノ酸置換でtRNA認識が変換された分子進化の過程を実証することに成功した。また超好熱古細菌Pyrococcus horikoshiiのリジルtRNA合成酵素(古細菌以外ではクラスIIに属するが、古細菌由来の本酵素はクラスIのATP結合モチーフを持ち、進化的に興味深い)の結晶構造をMAD法により解析し、モデルの構築を行っている。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1999 - 2000
【配分額】2,400千円 (直接経費: 2,400千円)