サハリンにおけるオホーツク文化集団の形成と変容―異文化接触の観点から―
【研究分野】考古学(含先史学)
【研究キーワード】
オホーツク文化 / 続縄文文化 / 北サハリン文化 / 海洋適応 / 道具としての歯 / 気候変動 / 歯の咬耗 / 食習慣と歯の咬耗 / 鈴谷式土器 / 歯の摩耗 / 道具としての歯の使用
【研究成果の概要】
この3年間の本科研による調査研究の成果をまとめて報告するシンポジウムを2/28-3/1に開催し、予稿集を刊行した。以下にそのアウトラインを記す。
(1)これまで単二系統のものと考えられてきたオホーツク文化は、土器や住居の形態などの特徴にもとづいて、サハリン南端-北海道北端部に成立した「十和田系」グループと、サハリン南部-北海道東部に展開した「鈴谷-江ノ浦系」グループの2つに分けることができる。
(2)前者は沿岸性海洋適応をとげた生活を特徴とし、その形成にはおそらく対岸沿海地方のグループの影響があった。
(3)後者はラグーン地形に適応した生活を特徴とし、その形成には北海道続縄文文化と北サハリン文化がかかわった。
(4)オホーツク人の歯の特徴である極端な摩耗は習慣性の咀嚼行為によってもたらされたと推定できる。ただしその原因については、歯を特定の作業に用いた結果ではないかとする考古学の側の理解と、食生活によるものではないかとする歯学の側の解釈が対立した状態にある。
(5)北サハリン文化グループと続縄文文化グループの動向には気候変動が関与している可能性が大きい。それのより具体的な解明には湖沼堆積物などの分析などが今後求められる。
いずれにせよ、今回の3年間の調査研究の成果を集約してさらに的を絞り、そのうえで第2次のサハリン調査研究プロジェクトを企画・実現してゆくことが重要である。
【研究代表者】