ホモ・サピエンス躍進の初源史:東アジアにおける海洋進出のはじまりを探る総合的研究
【研究キーワード】
ホモ・サピエンス / 東アジア / 旧石器時代 / 縄文時代 / 海洋進出 / 海洋拡散 / 日本列島
【研究成果の概要】
海域別調査(津軽・伊豆・対馬・琉球):津軽海峡については、青森の縄文早期遺跡出土黒曜石の原産地分析などを行い、新たに判明してきた当時の意外に活発な海峡横断の在り方について論文報告した。伊豆諸島海域については、後期旧石器時代Ⅶ層段階をターゲットとして神津島産黒曜石出土例を追跡したところ、千葉方面に神津島産黒曜石が供給されていることが明らかになった。対馬海峡については、韓国各地域における旧石器~新石器時代の黒曜石利用を示すデータを集成し、実地調査および現地研究者との意見交換も通じて内容を精査する作業をほぼ終えた。九州からの石材運搬を裏付ける結果となっている。琉球列島海域については、沖縄島のサキタリ洞遺跡において発掘調査を実施し、旧石器時代の海洋適応に関わる新たな遺構を発見した。また、沖縄各地の遺跡出土品について顔料分析・石材産地分析を進めている。
日本周辺域の調査:台湾東岸と東南アジアの更新世~完新世石器群の調査を実施した。これらは後期旧石器時代初頭の剥片石器群を理解するための比較資料となる。
漂流シミュレーション:琉球列島への移住が偶然か意図的かを区別するための分析を、台湾からルソン島まで拡大し、論文化のためのデータ整理を行っている。
古代舟研究:先史時代の舟利用解明へ向けて、竹の舟の可能性について述べた論文を出版した。石斧による丸木舟製作を完了して台湾沖で実験航海を行い、このタイプの舟の外洋航行能力を確認した。また、近現代の丸木舟利用法調査の一環として、青森県東通村の木造船(特に丸木舟漁)の関連聞き取り調査を行った。
石斧の研究:旧石器時代の刃部磨製石斧の複製製作実験と、木・鹿角・皮などを対象物とした使用痕分析を実施し、さらに旧石器遺跡出土の石斧の3Dスキャンとマクロ・ミクロレベルでの破損状況の調査を実施したところ、後者において木工利用と考えられる痕跡が確認された。
【研究代表者】