クロマチン動態の解析による宿主-レトロウイルス間相互作用の解明
【研究分野】ウイルス学
【研究キーワード】
エピジェネティクス / SWI / SNF複合体 / HIV / MLV / スプライシング / ジンサイレンシング / 再活性化 / 潜伏感染 / ジーンサイレンシング / レトロウイルス / レンチウイルス / p54nrb / RNA編集 / 転写後制御 / プロテオミクス / クロマチン構造変換因子 / ヒストンメチル化 / siRNA / 後転写制御
【研究成果の概要】
ポストゲノム時代を迎えた現代、エピジェネティクスの分子基盤を明らかにしてクロマチンの動態に基づいて感染機構を解明する必要がある。本研究では、レトロウイルスやレンチウイルスの初期感染、潜伏感染、再活性化に伴うウイルス遺伝子の発現の開始、維持、抑制と抑制解除の分子機構を、クロマチン動態、特にヒトにおける代表的なクロマチン構造変換因子SWI/SNF複合体を中心に置いて明らかにすることを目的としている。この3年間で以下の結果を得た。
1.MLVのLTRをもつレトロウイルスベクター及びtat非存在下のHIVベクターの安定な発現には、Brmが細胞内に存在することが必須であり、Bmの発現を欠くとstochasticで急速なgene silencingをおこすことが示された。また、このsilencingはintegration siteによっては、再活性化をしうることが示された。
2.プロテオーム解析により得られたSWI/SNF複合体に弱い親和性で結合するタンパク因子群の中でp54^<nrb>は、転写、スプライシング、さらにはRNA editingに関与することが知られる。またHIV RNAの特定配列と結合する活性をもつことも報告されている。これまでの解析の結果、Brmとp54は転写開始時にプロモーターに共局在し、その後も、コーディングDNAまたは転写産物の近傍にPSFタンパク質と共に存在し、スプライシングの過程に積極的に関与することが示唆された。実際Brm発現欠失細胞では選択的スプライシングを受ける遺伝子群の一部において、一部のexonを読みとばす傾向をもつことが示された。p54を含むSWI/SNF様複合体は転写開始から伸長に至るまで連続的に共局在して協調してスプライシングに関与するものと考えられる。HIVのスプライシングに対する影響を解析中である。
【研究代表者】