生体膜リン脂質の配向性制御分子の同定とその機能についての研究:細胞の形態形成における役割に着目して
【研究分野】細胞生物学
【研究キーワード】
リン脂質 / 脂質二重層 / フリップ-フロップ / 細胞極性 / 上皮細胞 / アクチン / 酵母 / ホスファチジルエタノールアミン / 細胞骨格 / 細胞膜 / 細胞分裂 / 分裂溝 / 神経細胞
【研究成果の概要】
生体膜を構成する脂質二重層内外でリン脂質が非対称に分布することが古くから知られているが、その生物学的な意義は未だに明らかにされていない。我々は、細胞質分裂終期の分裂溝において局所的にリン脂質配向性が解消し、このリン脂質の動きが収縮環の再編シグナルとなっていることを見出した。この観察を契機に一連の解析を行い、形質膜におけるリン脂質分子の分布や配向性の変化に起因する局所的な膜構造のゆらぎが、細胞骨格系蛋白質を始めとする機能分子が会合・集積する場を特定する位置情報となり、細胞の形態や極性形成に関わる可能性を提唱している。
このような仮説を検証する目的で、形質膜における膜リン脂質分子の配向性に異常を来した酵母変異体群を樹立し、その原因遺伝子の解析から新たな膜リン脂質配向性制御蛋白質Ros3Pを同定した。Ros3Pは二回膜貫通型の糖蛋白質で、形質膜および小胞体を含む内膜系に存在し、その一部は酵母における脂質ミクロドメイン・ラフトにも結合していることが明らかとなった。遺伝子破壊及び高発現株を用いた機能解析により、Ros3Pは細胞膜内外でのリン脂質配向性を制御するとともに、アクチンパッチの形成や出芽部位の決定にも関わることが明らかとなった。哺乳動物でのRos3P相同分子は、腎臓・脳・肝臓に強く発現し、腎上皮細胞系ではアピカル側の形質膜及び小胞膜に局在する。本年度得られたこれらの知見は、Ros3Pが膜リン脂質と細胞骨格系のクロストークを介して細胞極性形成に関わるユニークな機能を有する分子であることを示唆している。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
榎本 和生 | 財団法人東京都医学研究機構 | 東京都臨床医学総合研究所 | 研究員 | (Kakenデータベース) |
伊藤 康一 | 財団法人東京都医学研究機構 | 東京都臨床医学総合研究所 | 研究員 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2000 - 2002
【配分額】13,900千円 (直接経費: 13,900千円)