細胞内共生微生物ボルバキアに関する進化学的・細胞生物学的研究
【研究分野】動物生理・代謝
【研究キーワード】
性比歪曲因子 / 細胞質不和合 / ボルバキア密度 / コオロギ / 雌化 / 雄性致死 / トランスポゾン / プロファージ / 性比 / 節足動物 / 共生微生物 / リケッチア / 性比異常 / 宿主受容性 / アワノメイガ / マダラメイガ / ボルバキア / 系統解析 / WOSP / 精子 / groEオペロン / 産雌性単為生殖
【研究成果の概要】
1.雌バイアス性比が不完全に母性遺伝するようなアズキノメイガ非ボルバキア感染系統(MD7)において,いったんは正常性比に自然治癒した,すなわち性比歪曲因子が伝達されなかったようにみえた場合でも,数世代後にふたたび強い雌バイアス性比を示すようになる場合のあることが確認された.同様の現象は,低頻度ながら,アズキノメイガの他の系統においても観察された.
2.タイワンエンマコオロギにおけるボルバキア感染と,それによる生殖異常について調べた.まず,ボルバキアの膜タンパク質遺伝子wspに基づく系統解析を行い,このコオロギに感染しているボルバキアは,ヒメトビウンカ,ヒラタコクヌストモドキ,チョウの1種,タマゴヤドリコバチおよびテントウムシなどに保持されているボルバキアと近縁であることがわかった.つぎに,生殖異常のタイプを検討する目的で,テトラサイクリン処理によって非感染系統を作製し,感染系統との間で交配実験を行った.その結果,感染雄と非感染雌の交配においてのみ,受精卵の孵化率が約20%にまで低下することがわかった.これによって,コオロギへのボルバキアの感染は比較的強度の細胞質不和合をもたらしていることがわかった.さらに,コオロギの各組織におけるボルバキアの分布をPCR法によって調べたところ,体液および精子にのみボルバキアの存在が認められなかった.また,定量PCR法による解析結果から,ボルバキアの密度は脂肪体においてもっとも高いことが明らかになった.
3.遺伝的雄を雌化することによってアズキノメイガの性比を歪めることの知られているボルバキアを,微細外科手術によってスジコナマダラメイガへ移植した.この結果,後者にも性比の歪みがもたらされたが,遺伝解析の結果,これは雌化によるものではなく,雄性致死に起因することが明らかになった.これによって,ボルバキアによる生殖異常の表現型を決めるのは,ボルバキアの系統の違いではなく,宿主の側であることが強く示唆された.
4.マダラメイガ類に感染するボルバキア類のゲノムには多くのトランスポゾンが散在することを明らかにし,それらの構造を解析した.また,ボルバキアゲノム中に存在するプロファージ様配列を発見し,各系統におけるその分布を調べることによって,このファージの進化的起源を考察した.
【研究代表者】
【研究分担者】 |
星崎 杉彦 | 東京大学 | 大学院・農学生命科学研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
森岡 瑞江 (森岡 瑞枝) | 東京大学 | 大学院・理学系研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
佐々木 哲彦 | 東京大学 | 大学院・理学系研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
三浦 一芸 | 農水省 | 中国農業試験場 | 主任研究官 |
野田 博明 | 農水省 | 蚕糸・昆虫農業技術研究所 | 室長(研究職/">(Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1997 - 1999
【配分額】6,900千円 (直接経費: 6,900千円)