多細胞生物における細胞個性の解析のための研究手法の開発
【研究分野】発生生物学
【研究キーワード】
C.エレガンス / ポリA結合蛋白質 / 単一細胞 / マイクロアレイ / mRNA単離法 / ゲノミクス / 遺伝子発現解析 / 感覚神経
【研究成果の概要】
多細胞生物の発生過程では、個々の細胞で遺伝子発現パターンの差異が生じ、それにより細胞内分子ネットワークが細胞間で大きく異なってくる。この差異が個々の細胞種の機能の違いを生み出していると考えられ、その違いを包括的に理解するための方法が必要である。そこで、体の全細胞数が約1000個と少なく、個々の細胞がすべて同定されているモデル生物、線虫C.エレガンスを用い、全遺伝子発現パターンと細胞個性の連関を理解するための手法の確立を行った。PABP(ポリA結合蛋白質)を利用して特定の細胞からmRNAを抽出する技術、poly(A)pull-down法を開発、整備した。PABPを線虫の感覚神経に発現させ、これらの神経からmRNAを抽出し、cDNAマイクロアレイに適用することにより感覚神経特異的な遺伝子発現を解析した。コントロール細胞に比較して高い発現を示す遺伝子を順位付けし、これらの発現パターンをレポーターアッセイで調べたところ、発現の検出された15遺伝子のうち13遺伝子が感覚神経に発現していた。約30対の感覚神経のすべてに発現するもの、一部に発現するものなどさまざまな発現パターンを示す遺伝子が同定されていることがわかった。また、種々の細胞に特異的に遺伝子を発現させるために、細胞特異的プロモーターの収集を行った。Gatewayシステムをもとにしたベクターシステムを構築し、線虫ゲノム由来のプロモーター断片をpENTRベクターに挿入したものを揃えることにより、簡便に個々の解析対象の遺伝子をそれぞれのプロモーターの制御下に置くことができるようになった。感覚神経、介在神経を中心として、特定の少数の神経サブセットに発現するプロモーターを19種集め、pENTRベクターに挿入した。これらのシステムを応用することにより、今後さらに細胞個性の分子的理解が可能となるであろう。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
國友 博文 | 東京大学 | 遺伝子実験施設 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】萌芽研究
【研究期間】2003
【配分額】3,400千円 (直接経費: 3,400千円)