エジプト西方砂漠ハルガオアシスにあるアル・ザヤーン神殿西遺跡の解明
【研究分野】考古学
【研究キーワード】
エジプト / 神殿 / コプト期 / オアシス / 窯 / 発掘 / 3次元デジタル記録 / 土壌分析 / グレコ・ローマン / コプト / 遺跡探査 / GIS / 土壌 / 3次元レーザスキャン / 3Dディジタルアーカイブ / レーザスキャナ / 地中レーダ / ハルガオアシス / 西方砂漠 / グレコ・ローマン時代 / 遺跡 / 3次元デジタルアーカイブ / 城砦 / アル・ザヤーン神殿
【研究成果の概要】
1.地中レーダ探査結果に基づき10m×10mの大きさのトレンチを発掘した。出土した遺構は直径2mほどの窯のような構造の遺構と,それを切って作られ直角の壁を持つ遺構,その窯状遺構の北側に接した緩やかにカーブを描く日干しレンガの壁などである。この壁にそって,たくさんの完形の土器が置かれているのも発見された。この遺構の特徴として,完形品の土器の出土が多いことである。出土土器については,修復・整理作業も行った。ハルガ近郊のオアシスで出土した土器類と,比較検討した結果,現在までにこの遺跡で出土した土器類は,おおむねローマ期とりわけコプト期に属すると判断された。
2.遺跡周辺の踏査にて,過去に水が存在した痕跡や水路痕を発見した。いくつかの水路痕についてはGPS測量を行い地図上に記録した。この水路痕は神殿の西に2km以上も伸びていて,貯水池の痕跡や,耕作の痕跡も発見した。この遺構の年代は不明だが,アル・ザヤーン遺跡の環境復元やオアシスの水利用の歴史を明らかするために重要な遺構と思われる。
3.現在のアル・ザヤーン神殿の3次元デジタル記録を行い,建物の構造についてはほぼ記録できた。さらに新しい試みとして,発掘過程の3次元デジタル記録も試みた。
4.採取した堆積砂の理化学分析を行い,アル・ザヤーン神殿をとりまく環境の復元を試みた。堆積砂は貫入式硬度計の波形からPlaty, Root, Hard, Coarse, Sticky, Field, Wet, Dumpの8つに分類することができた。採取試料のpH(H_2O),電気伝導度,粒形組成,水抽出陽イオン,鉄の形態分析,ケイ素・アルミニウム含量,土壌有機物量等の結果と現地調査に基づく堆積砂の分類結果とは興味深い対応がみられた。各地点の特徴の比較によってアル・ザヤーン神殿の西部地域では,かつての植生や水があった環境から現在の乾燥した状態へ移行したことが推定された。
5.この成果を世界に発信するために,英文の「El-Zayyan 2003-2006」という調査報告書を発行した。
【研究代表者】