落葉広葉樹林生態系における種多様性-生産性仮説の検証
【研究分野】生態
【研究キーワード】
DCCA / 種多様性 / 生産性 / 環境傾度 / 景観 / 侵入 / 森林生態系 / 階層構造 / 土壌養分 / 機能群 / 生活形 / 草本群集
【研究成果の概要】
本研究では草本群集で実験的に検証されてきた、多様性が高い群集ほど生産性が高いという仮説を落葉広葉樹林群集において検証した。
森林群集は室内実験がほぼ不可能なことと、自然条件では多様性以外の条件が一定である場所が極端に限られるため、多様性と生産性の関係を明らかにすることが非常に困難である。しかし本研究が対象とする苫小牧演習林の二次林は自然条件下にありながら、気候や土壌などの環境条件や遷移段階など履歴が一定であり、対立仮説の検証が可能な条件が満たされる極めて稀な条件にあると言える。この苫小牧演習林の二次林にそれぞれ0.2ha程度の調査区を38箇所設定し、これらの林分で8年間の生産量の算出、キャノピーアナライザによる葉群構造の測定、土壌中の栄養塩の測定を行った。また各林分に計190個の1m^2のサブコドラートを設け、すべての林床植物を刈り取り種毎に乾重量を測定した。
2001年度は多変量解析(DCCA)を適用して、大規模攪乱跡地に成立した温帯二次林の植物種(高木種と林床植物)の組成を解析した。稀な種を解析から除外した場合でさえ、DCCAは高木種の優占度と環境要因の間に曖昧な関係しか示さなかった。林床植物の最優占種の場合は、林冠種の種数と対応すると考えられる一軸のスコアが減少した。この結果は、高木種のフェノロジーの違いや葉の質の違いを通して、高木種の組成が優占林床植物の生活史に影響を与えていることを示していると考えられた。攪乱が大規模に起こった場合の森林の発達途上では競争-侵入が重要なプロセスであり、景観スケールでの種の組成はローカルな種プールにより決定されているだろうことをこの研究は示している。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】2000 - 2001
【配分額】1,800千円 (直接経費: 1,800千円)