遺伝子発現リプログラミングへのクロマチン構造とヒストン変異体の関与について
【研究キーワード】
遺伝子発現リプログラミング / 1細胞期胚 / 未受精卵 / ヒストン変異体 / リプログラミング / 遺伝子発現 / クロマチン構造
【研究成果の概要】
受精前後において、分化した卵から全能性を持つ受精卵へと変化するが、その際に大規模なクロマチン構造の変化を伴う遺伝子発現のリプログラミングが起こる。一方、クロマチンを構成するコアヒストンおよびリンカーヒストンには様々な変異体が存在し、それらがクロマチン構造および遺伝子発現の調節に大きく関わっていることが知られている。そこで本研究では、ヒストン変異体に着目し、遺伝子発現リプログラミングを調節するメカニズムの解明を目指す。
本年度は、受精前後におけるヒストン変異体の置換とクロマチン構造の変化との関連を明らかにすることを目的とした。これまでの研究では、ヒストン変異体のゲノム上の配置については、ChIPやCUT&RUNによる解析が行われてきているが、これらは単に配置を調べるだけで、クロマチン構造との関連は明らかにできない。そこで、塩析を行った後にCUT&RUNを行うことでこれらの関連を解析する手法を考案した。すなわち、塩析によるヌクレオソームからのヒストンの離脱を指標としたクロマチン構造の解析とCUT&RUNによる配置の解析を複合させた手法である。
そこでまず予備段階として、EGFPを結合させたH2Bを1、2細胞期胚に取り込ませ、塩濃度を変化させてそのクロマチンからの乖離を調べたところ、クロマチン構造が緩んでいる1細胞期胚では、2細胞期胚と比較して低い塩濃度から乖離が始まっていた。また、H3変異体の特異抗体による免疫染色での検出では、変異体間で乖離が起こる塩濃度に違いが見られた。さらにH3変異体に依存するヒストン修飾に関しても、それらの間で乖離度に違いがあった。しかし、まだ乖離が始まる前の低い塩濃度で処理した際に、未処理のものよりもH3変異体や修飾のシグナルが増加するという現象が見られ、これらは解析の精度に悪影響をもたらすものと考えられ、その改善が必要と考えられた。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(A)
【研究期間】2021-04-05 - 2024-03-31
【配分額】42,250千円 (直接経費: 32,500千円、間接経費: 9,750千円)