配偶子および胚性幹細胞をベクタ-とする遺伝子導入動物作出に関する基礎研究
【研究分野】畜産学
【研究キーワード】
精子 / 胚性幹細胞 / 遺伝子導入動物 / 体外受精 / キメラ胚 / 生殖系列キメラ / 遺伝子発現 / 胚移植 / 透明帯 / カルシウム / キメラ / 卵子 / 配偶子 / 胚盤胞
【研究成果の概要】
1.配偶子による遺伝子導入のための基礎的検討.精子を経由する遺伝子導入動物作出の可能性についてマウスを用いて検討した。すなわち,DNAとしてSV40プロモ-タ-に大腸菌βガラクトシダ-ゼ遺伝子を連結したものを用い,体外受精の条件下で受精卵への導入を検査した。その結果,卵割期胚の組織化学的検査によっても,また移植後の胎子におけるDNAの分析においても,外来性DNAが導入された形跡は全く認められなかった。従って,少くとも通常の体外受精の条件下では精子を経由する遺伝子の導入はきわめて困難であると結論された。しかし本研究を通して外来性DNAの発現を初期胚で検出する系が確立され,また卵丘細胞層除去および透明帯除去卵子の体外受精の条件が改善された。
2.胚性幹細胞を経由する遺伝子導入動物作出のための基礎的検討.まず,胚性幹細胞を初期胚から分離し,細胞株として樹立するための条件について検討し,129/SuJ系マウスの胚盤胞をマウス胎子由来の線維芽細胞上で培養することにより2株の樹立に成功した。そのうち,一方の細胞株(A3ー1)については,宿主胚盤胞へ注入してキメラ胚を作製し,その胚を偽妊娠雌マウスの子宮へ移植することによってキメラ雄マウスを得ることができた。このキメラ雄マウスは正常な雌との交配によって胚性幹細胞由来の産子を出産させ得ることが確認され,本研究で樹立された細胞株が機能的な生殖細胞へも分化し,遺伝子導入動物作出のための細胞として有用であると考えられた。遺伝子導入の条件については,ネオマイシン耐性遺伝子を組み込んだベクタ-の導入を試み,エレトクロポレ-ションによってG418耐性の細胞株の樹立に成功した。この細胞は受容胚へ注入するとキメラ胚を形成し,偽妊娠雌マウスへの移植後キメラ個体へ発生し得ることが確認された。今後,相同組換えによる遺伝子導入の基礎が確立されたと考えられる。
【研究代表者】