細胞の膜系構築機構の解明のための試験管内膜合成反応系の創成
【研究分野】応用生物化学
【研究キーワード】
グリセロリン脂質 / ホスファチジルコリン / ホスファチジルエタノールアミン / 脂質二重層 / Saccharomyces cerevisiae / 脂質二重膜
【研究成果の概要】
生体膜脂質の最も基本的なものはグリセロリン脂質である。本研究では、酵母由来のリン脂質合成系酵素と細胞成分を用いて、真核生物の代表的グリセロリン脂質であるホスファチジルコリン(PC)とホスファチジルエタノールアミン(PE)を含む二重層膜の、前駆体からのin vitro合成系の作製を試みた。
エタノールアミン(Etn)からPEを合成するKennedy経路中でCDP-Etnの合成を触媒するCTP : phosphoethanolamine cytidylyltransferase(ECT)は経路の特異性と速度を決定する重要な酵素である。ECTをコードする遺伝子ECT1を操作して6xHis tagを付加した酵素を大腸菌中で生産し、これを精製して結晶化に成功した。放射光を利用する回折像から、その3次元構造を得た。また、アミノ酸置換変異を有するECTを複数種つくり、その酵素機能を解析中である。CDP-EtnからPEを合成する段階の遺伝子EPT1をクローン化し、酵素生産系を作成中である。
酢酸生産菌Acetobacter acetiはPEのアミノ基をメチル化してPCを合成する。これは可溶性酵素であり、酵母の2種のPE methyltransferaseが膜結合酵素であってそれぞれ単独ではPCまでの3段階の反応を全て触媒する力が弱いのに比べ、単一の酵素で、PCまで合成可能である。そこで、この細菌の酵素遺伝子をクローン化し、glutathione S-transferase遺伝子を付加した融合遺伝子を作製して大腸菌中で生産、glutathione-Sepharoseカラムによって活性ある融合タンパク質を精製した。現在PEを含むリポソームにこの酵素を作用させ、PEからPCへのリン脂質極性基の変換を試みている。
以上、補欠採択ということもあって時間が足りず、当初目的が達成されたわけではないが、目的とする膜の合成に必要ないくつかの酵素を調製中であり、計画は進行中である。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
福田 良一 | 東京大学 | 大学院・農学生命科学研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】萌芽研究
【研究期間】2003 - 2004
【配分額】3,400千円 (直接経費: 3,400千円)