原子分解能でモータータンパク質1分子の運動を測定する
【研究分野】ナノ材料・ナノバイオサイエンス
【研究キーワード】
ダイニン / 1分子 / ステップサイズ / キネシン / モータータンパク質 / 原子分解能
【研究成果の概要】
細胞質ダイニンの1分子運動特性を2000年(生物物理学会,山口りさ他)に報告したが,データーを安定して得ることができなかった.昨年,Mallikらは,ダイニンの1分子が細胞内に比べ格段に遅い速度,小さな力,長いステップサイズ(>16nm)をとることを報告した。我々は,これら不安定さや遅い速度が,ダイニンが不活性になっているためと考え、新たに,運動活性の高いダイニンを得るために、ブタ脳細胞質ダイニンを、さらに微小管を用いて精製し、あわせてビーズのコーティング法を改良した。このダイニン1分子の運動特性を、高時間・空間分解能の計測システムにより測定・解析した。
その結果、細胞質ダイニン1分子は、ATP濃度によらずprocessiveに微小管上を運動した。最高速度は800nm/sであり、細胞内での速度と一致した。また最大発生力は、7-8pNに達し、キネシンとほぼ同程度であった。さらに、ステップサイズは、負荷によらず常に8nmで一定であった。しかし、ATPに加えてADP存在下では、16nm以上のlarge stepが観察された。時間分解能を上げて解析すると、このようなlarge stepは連続的に起こった8nm stepによるものであることがわかった。
本研究により、細胞質ダイニンは、キネシンと大きく異なる構造であるにもかかわらず、同様の力と速度、ステップサイズを持つことがわかった。モータードメイン全体の長さが約30nmもあるダイニンが、規則正しく8nmのステップを刻むことから、キネシンのようなhand-over-handモデルも視野に入れて、メカニズムを考える必要がある。またADP存在下で、協同的なstepを発生したことから、ADPが結合する事により、キネシンとは、異なる機能や制御機構を発生する可能性も示唆される。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2004 - 2005
【配分額】15,100千円 (直接経費: 15,100千円)