樹状突起スパインの形成・安定性を担う新たなアクチン骨格制御機構の解明
【研究キーワード】
ニューロン / inka2 / Pak4 / アクチンフィラメント / 樹状突起スパイン / アクチン / 接着班 / 細胞移動 / PP2A / スパイン / 大脳皮質 / アクチン骨格 / fmr1
【研究成果の概要】
inka2は哺乳類胎生期神経系において延髄や脊髄の腹側部脳室周囲のオリゴデンドロサイト前駆細胞や成体の大脳皮質や海馬などの前脳領域のニューロンに強く発現する。培養細胞にinka2を強制発現させると、アクチン線維の細胞内配置の異常が起こり、細胞形態が球状に変化し細胞接着の阻害や過剰な数のフィロポディアが形成される。我々はこれまでにNIH3T3のスクラッチアッセイによりinka2が接着斑(focal adhesion)の形成を調節し細胞移動能を制御することを明らかとしたが、その分子機構は不明である。セリン・スレオニンキナーゼであるPak4は、RhoGTPaseのエフェクター分子としてアクチン重合を制御する。今回、我々は脳組織及び培養細胞を用いた共免疫沈降や、inka2およびPak4組換えタンパク質を用いたキナーゼアッセイにより、Inka2-iBoxがPak4触媒ドメインに直接結合し、アクチン重合を抑制することを見出した。培養細胞に発現させたInka2はアクチンの脱重合を促進しPak4 活性を介した細胞突起の形成を抑制した。さらにInka2遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスを作製した。β-ガラクトシダーゼレポーターにより、Inka2が大脳皮質ニューロンに強く発現していることが示された。Inka2-/-マウスの皮質錐体ニューロンでは、樹状突起スパインの密度が低下し、樹状突起の形態に異常が見られた。さらにInka2-/-マウスの大脳皮質ニューロンではPak4シグナルカスケードの下流分子LIMKとcofilinの顕著なリン酸化亢進が認められた。これらの結果から、Inka2がニューロンにおける内在性Pak4阻害剤として機能すること、樹状突起スパインの形成に必要なアクチンの再編成の重要なメディエーターであることが明らかとなった。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)