運動発生におけるキネシン頚部の構造変化
【研究分野】生物物理学
【研究キーワード】
キネシン / ncd / Kid / 微小管 / 運動連続性 / 光ピンセット / キメラタンパク質
【研究成果の概要】
微小管のモータータンパク質であるキネシンは、1分子が微小管上を数μmにわたり動くことができる。これはキネシンが双頭分子であり、各々の頭部が互い違いに微小管と相互作用を繰り返すというモデルによって説明されている。このためには頚部を介して2つの頭部の間で何らかの連絡が行われていると考えられ、運動連続性の起源を探ることは運動機構を明らかにする上で重要な情報をもたらす。本研究では、運動連続性を示すキネシンと運動連続性をもたないといわれるキネシン様タンパク質、さらに両者のキメラタンパク質についてナノメートルレベルの運動計測系で運動連続性を調べた。
ショウジョウバエのキネシンのフラグメントのダイマーとモノマー、ショウジョウバエのncd、ヒトKidのモノマーを大腸菌で発現、精製し、これらのタンパク質をさまざまな濃度でポリスチレンビーズに結合させ、光ピンセットで微小管上へもってゆき、ATP非存在下で微小管に結合するビーズの割合と、ATP存在下で微小管上を20nm以上動くビーズの割合を調べた。その結果、NcdとKidは1分子では20nm以上の運動連続性を示さないことが明らかになった。さらに、キネシン頭部とKid頚部をつないだキメラタンパク質(Kined)とKid頭部とキネシン頚部をつないだキメラタンパク質(Kidsin)についても同様の実験を行ったところ、Kinedでは運動連続性がみられ、Kidsinでは運動連続性がみられなかった。このことは、キネシン頚部を持つものは1分子でも連続的に動くことができるが、Kidの頭部はキネシン頚部によりダイマーを形成していても連続的な運動が行えないことを意味する。従って、1分子の運動の連続性には、頚部を介した頭部どうしの共同性は必要でないと考えられる。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
枝松 正樹 | 東京大学 | 大学院・総合文化研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】1998 - 1999
【配分額】3,500千円 (直接経費: 3,500千円)