タンパク質間相互作用の一分子くり返し計測
【研究分野】生物物理学
【研究キーワード】
レーザー光ピンセット / アクチンフィラメント / ミオシン / スペクトリン / 1分子結合力 / 顕微計測 / 生体分子モーター / 顕微操作 / 温度パルス顕微鏡 / pN,nm顕微解析 / アクトミオシン硬直結合 / 双頭結合,単頭結合
【研究成果の概要】
(1)アクチンフィラメントの後端に結合した直径1μmのポリスチレンビーズを、レーザー光ピンセットによって顕微操作し、アクチンフィラメントとアクチン結合性タンパク質との間の分子間結合に負荷を加え、結合の破断力などを繰り返し顕微計測することができる方法を、この数年間で我々は確立した。この方法を、アクチンフィラメントとスペクトリン(赤血球の裏打ちタンパク質の一種)との1分子結合(破断)力の計測に応用した。その結果、予備的実験ではあるが、結合の破断力として、平均3pNという値が得られた。これは、アクチンフィラメントとミオシン間の硬直結合力(平均9pN)や、α-アクチニンとの結合力(平均15pN)と比べて有意に小さい。
(2)アクチンフィラメントとミオシン(HMM)分子間の硬直結合の破断力の測定については、単頭のHMMを調製して双頭のHMMと比較した。その結果、単頭HMMの破断力の分布は約7pNにピークを持つのに対して、双頭HMMでは数pNから20pNにわたる広い分布を示した。(7pNと10数pNとに2つのピークをもつ)。このことから、アクチンとHMM分子との結合力は、単頭と双頭とで約2倍異なることが示唆された。
(3)アクチン分子を、蛋白分解酵素Subtilisinで処理すると、アクチンSubdomain2が2カ所で限定分解される(質量分析とペプチドシークエンサーによって切断箇所を同定した)が、そのことによって、HMM分子による滑り速度と滑り力が約20%に減少した。ところが、硬直結合の破断力は70%程度にしか低下しなかった。このことから、アクチンのsubdomain2は、ATP存在下での滑り機能に重要な役割を演じているが、ATP非存在下での硬直結合にはそれほど関与していないことが推論された。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1996 - 1997
【配分額】7,200千円 (直接経費: 7,200千円)