光ピンセット法を用いたリボソームによる翻訳素過程の力学解析
【研究分野】生物物理学
【研究キーワード】
光ピンセット / リボソーム / 翻訳開始 / 翻訳アレスト
【研究成果の概要】
本申請研究では、翻訳過程のうち「開始段階」と「アレスト段階」に着目し、その素過程において1分子力学解析を行うことを目的としている。以下に、本年度の成果を示す。
(1)翻訳開始段階の1分子力学解析
30Sサブユニット-mRNA複合体に開始tRNA、開始因子2(IF2)、50Sサブユニットを加えて、30Sサブユニット-mRNA間の破断力測定を行った。30Sサブユニット-mRNA複合体に開始tRNAを添加すると、破断力が増大することを見出した。また、30Sサブユニット-mRNA-開始tRNA複合体にIF2と50Sサブユニットを共存させると、さらに破断力が増大することが分かった。先行研究により、開始tRNAの結合に伴ってmRNAのコンフォメーションが変化すること、50Sサブユニットの結合およびIF2のGTP加水分解によりリボソームの構造やIF2の結合位置が変化することが報告されている。このようなリボソーム-翻訳因子複合体のダイナミックな変化が30Sサブユニット-mRNA間相互作用を安定化し、効率的な翻訳開始を可能にしていると予想される。現在この仮説を検証すべく、コントロール実験を含めて様々な確認を行っている。
(2)翻訳アレスト段階の1分子力学解析
C末端にSecMのアレスト配列を有するHaloTagおよびSNAP-tagタンパク質を組換え発現させるコンストラクトを作成した。解離因子を除いた無細胞タンパク質翻訳系を用いることで、翻訳がアレストしたリボソーム-タグタンパク質複合体が安定に調製できることが分かった。また、リガンドを介してタグタンパク質をガラス基板上に固定することで、リボソーム-タグタンパク質複合体が効率よく基板固定できるようになった。現在までに数例、リボソーム-SecMアレスト配列間相互作用の破断が観察できている。
【研究代表者】
【研究種目】研究活動スタート支援
【研究期間】2009 - 2010
【配分額】2,756千円 (直接経費: 2,120千円、間接経費: 636千円)