栄養環境刺激がメダカの精子および次世代初期胚へもたらすエピゲノム変化の解析
【研究キーワード】
高脂肪食 / 卵成熟 / 卵黄 / 次世代 / エピジェネティクス / 代謝 / 獲得形質遺伝 / リプログラミング
【研究成果の概要】
本研究では、ゲノム科学の優れたモデル生物であるメダカを用い、親個体に対する高脂肪食投与が生殖細胞および次世代個体にどのような変化をもたらすかを明らかにすることを目指す。当初は父親個体に対する高脂肪食(High-fat diet : HFD)投与の影響を解析していたが、次世代個体にほとんど変化が生じなかったため、2020年度より母親個体に対する高脂肪食投与に実験系を切り替えている。
2020年度までに、母親HFD群ではコントロール(Control diet : CD)群と比較して受精率および正常発生率が低下すること、および胞胚において転写・翻訳関連の遺伝子群の発現が低下していることを見出していた。2021年度はサンプル数を増やして上記の現象の再現性を確認したほか、HFDが母体の卵成熟機構に与える影響の解析を進めた。
まず卵巣の組織像観察を行った結果、HFD群ではCD群と比較して卵巣が肥大化しており、また異常な形態を示す卵母細胞が高頻度で観察された。続いて卵成熟を制御する視床下部―脳下垂体―生殖線軸に着目したところ、HFD群では脳下垂体における黄体形成ホルモン(LH)の発現量は変化していないものの、卵胞刺激ホルモン(FSH)の発現量が上昇していることがわかった。さらに、HFD群では肝臓においてエストロゲン受容体や卵黄タンパク質の発現量が低下していることも分かった。以上より、HFD群においては生殖腺刺激ホルモンの分泌量変化や卵黄タンパク質の発現低下が卵成熟異常をもたらし、受精率低下や次世代胚の発生異常を引き起こしている可能性が示唆された。
なおHFD群の次世代胚における翻訳関連遺伝子群の発現低下の結果を踏まえ、翻訳低下が次世代胚の発生異常に寄与している可能性を考えた。そこでまず胞胚でのタンパク質生合成の定量実験を試みたが、現在のところ両群間で有意な差は見出されていない。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)