冷却イオントラップ分光による天然変性タンパク質複合体へのボトムアップアプローチ
【研究キーワード】
天然変性タンパク質 / レーザー分光 / 赤外分光 / 冷却イオントラップ / 質量分析 / 量子化学計算 / 部分構造解析 / イオントラップ分光
【研究成果の概要】
1)YEMPS-ドーパおよびノルアドレナリン複合体のの冷却イオントラップ赤外分光
天然変性タンパク質であるα-シヌクレインのドーパミン結合部位にはドーパミン誘導体であるドーパやノルアドレナリンも結合することが分かっている。そこで,YEMPS配列の部分ペプチドAc-YEMPS-NHMe(以降YEMPS)とプロトン付加ドーパおよびプロトン付加ノルアドレナリンの複合体をエレクトロスプレーで気相中に取り出し,冷却イオントラップ中の極低温下で赤外スペクトルを測定した。ドーパミン複合体の場合と同様に,プロトン化アミノ基がYEMPSと優先的に結合するのを阻害するために,18C6クラウンエーテルでプロトン化アミノ基を包接保護した。その結果,これら2つの複合体でも,YEMPSとカテコールOH基が結合した構造を形成させることができた。YEMPSの2 次構造を明らかにするために,ペプチド結合のC=O伸縮振動(amide-I)を測定したところ,1650 cm-1にバンドが観測され,α-ヘリックス構造が形成されていることが確認された。従って,ドーパミンと同様に,ドーパやノルアドレナリンも複合体形成によりYEMPSにヘリックス構造を誘起することが分かった。
2)異性体分離したスペクトル測定法の検討
クラウンエーテルを付加した複合体ではUVスペクトルの測定が困難なため,UVスペクトルを用いた異性体分離ができない。そこで,IRスペクトルのみを用いて異性体分離したスペクトルを測定する方法であるIR-IR dip分光法を用いる必要があるが,これを実現するためには,1本目のIR照射と2本目のIR照射の間で質量分析する必要があり,現有装置では困難である。そのため,冷却イオントラップの後の線形飛行時間方質量分析器を2段の質量分析器に改造する必要があり,最適な方法をイオン軌道シミュレーションを用いて確立した。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
石内 俊一 | 東京工業大学 | 理学院 | 教授 | (Kakenデータベース) |
平田 圭祐 | 東京工業大学 | 科学技術創成研究院 | 助教 | (Kakenデータベース) |
宮崎 充彦 | 東京工業大学 | 科学技術創成研究院 | 特定准教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】挑戦的研究(開拓)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)