多孔質ガラスナノ空間を利用した、常温、大気下での二酸化炭素の光還元
【研究分野】物理化学
【研究キーワード】
光合成 / フィコビリソーム / 光化学系I / 励起エネルギー移動 / 光捕集アンテナ / 人工光合成 / 多孔質 / ガラス / ギ酸 / 光水素発生 / 嫌気 / 再生可能 / 光触媒 / デバイス / 多孔体 / 生体材料 / 再生可能エネルギー
【研究成果の概要】
天然の光合成系において、シアノバクテリアの光化学系Iには、ロッド型フィコビリソームがアンテナとして結合している。しかし、エネルギー移動の効率と機構は明らかになっていなかった。フィコビリソームは550-650 nmに吸収を持ち、光化学系Iが持つクロロフィルaがあまり吸収しない波長領域の吸収を補う役目を担っている。天然-人工ハイブリッド光合成系において、光化学系Iの光捕集アンテナを拡張することは太陽光を効率よく捉えるために重要である。まずは、天然の光合成において、ロッド型フィコビリソームから光化学系Iへのエネルギー移動効率の定量とその機構を解析が必要である。既に取得していた時間分解蛍光スペクトルデータから、エネルギー効率の解析を行った。その結果、時定数90 ps, エネルギー移動効率95%で、ロッド型フィコビリソームから光化学系Iにエネルギー移動が起きていることがわかった。ロッド型フィコビリソームに結合している色素フィコシアノビリンのある一分子が他のフィコシアノビリンよりも長波長化しており、そのフィコシアノビリンをレッドフィコシアノビリンと名付けた。通常のフィコシアノビリンの蛍光波長は640 nmであるが、レッドフィコシアノビリンの蛍光波長は670 nmであった。これは、クロロフィルaとの距離が3.9 nm離れていても、95%のエネルギー移動効率を達成できるように、蛍光波長を670 nmに長波長化させ、光化学系Iのクロロフィルの吸収670 nmに合致するように調整したのだと考えられる。ロッド型フィコビリソームが3.9 nm離れて、光化学系Iの外側に結合しているのは、外から内側に向かってエネルギー移動させるためと、フェレドキシンとの反応を円滑にさせるためであり、光化学系Iにとって合理的な光捕集アンテナである。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究(B)
【研究期間】2017-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)