高感度振動分光法による水表面単分子膜の構造と反応性に関する研究
【研究分野】物理化学
【研究キーワード】
水表面単分子膜 / 赤外スペクトル / ラマンスペクトル / ポリジアセチレン / 光重合 / 構造 / 高感度振動分光法 / 反応
【研究成果の概要】
(1)高感度赤外外部反射法を用いた長鎖脂肪酸水表面単分子膜における2価金属イオン相互作用に関する研究
水表面単分子膜の赤外反射スペクトル測定用小型トラフを作成した。本装置は自動的なバリアー移動機構を備え表面圧と分子占有面積を変化させることが出来る。トラフ内の水層温度を10℃以下に保つことによって赤外光による単分子膜の撹乱をおさえて良好なスペクトル測定が可能であることを確かめた。解離状態にある一連の長鎖脂肪酸、CH_3(CH_2)_nCOOH(n=13、16、18)、とトラフに存在するBa^<2+>、Cd^<2+>、Pb^<2+>イオンとの相互作用について、分子専有面積によるCOO基の逆対称および対称伸縮振動バンドの振動数変化を詳細に測定するとともに、ab initio分子軌道計算にもとずく振動解析を行なった。その結果、各試料ともBa^<2+>イオンはCOO基とbridging型の配位構造をとり、Cd^<2+>、Pb^<2+>イオンはbidentate型配位構造をとると結論した。
(2)高感度赤外外部反射法を用いたジアセチレン誘導体の水表面における構造と光重合過程に関する研究
ジアセチレン誘導体、CH_3(CH_2)_<11>C≡C-C≡C(CH_2)_8COOH(DA)、について(1)と同様の研究をすすめ、特にBa^<2+>イオン存在下で配位様式が分子占有面積の減少にともなってbridging型からbidentate型へ変化することを確かめた。また紫外光照射によるDAのポリジアセチレン(PDA)生成過程をしらべ、反応の進行にともない単分子膜の規則性が増加することを見出した。
(3)高感度ラマン分光法を用いたジアセチレン誘導体の水表面における光重合過程に関する研究
底面に励起レーザー光入射窓を持つ(1)と同様のトラフ、液体窒素冷却CCD検出器を備えた高感度分光器(f=1.8)などを用いて全反射方式で水表面単分子膜のラマンスペクトル測定可能な装置を製作し、DA((2)参照)水表面単分子膜の構造と光重合過程について調べた。その結果、分子占有面積の大きな領域では、共役鎖長の比較的短いポリジアセチレン(PDA)が生成し小さな領域では共役鎖長の比較的短いPDAが生成することを確かめた。
【研究代表者】