らせんチューブ構造の構築とその機能解析
【研究分野】高分子合成
【研究キーワード】
らせん構造 / チューブ構造 / ポリアニリン / フォールディング / 分子認識 / オリゴアニリン / 水素結合
【研究成果の概要】
生体分子の持つ機能や構造からヒントを得て、新しい機能性分子システムを構築することは化学における大きな挑戦の一つである。生体中において、チューブ構造を形成する分子群は様々な高い機能を発現していることから、本研究では機能性分子の構築を目指し、鎖状N-Bocオリゴアニリンから成るらせんチューブ構造の構築を行った。本年度はN-Bocオリゴアニリン15量体を合成し、これについて1,8-diazabicyclo[2.2.2]octaneの添加によるらせん構造の形成をNMR測定により観測した。前年度オリゴアニリン11量体に対し、3等量のジアミンを添加することでらせん構造構築が示唆されたが、今回合成した15量体においてはオリゴアニリン内の10個のカルボキシル基がジアミンと相互作用するために必要な5等量のジアミン添加時にスペクトルは最もシャープに変化し、その後のジアミンの添加では大きな構造変化は見られなかった。更にこの時、ジアミンのシグナルは積分比4:1の非等価な2種類として観測され、らせん構造内部の中央に位置する1つのジアミンが最も低磁場側に観測されたものと考えられる。前年度行ったオリゴアニリン11量体では低温下でのNMR測定測定により非等価なシグナルが観測され、本15量体において室温下で既にジアミンが非等価に観測されたことから、長いらせん構造がより安定化されることが強く示唆された。
また、得られたらせんチューブは、直径10程度のπ電子の豊富な内部空孔を有しているため、チューブ内へのカチオン性のゲスト分子の選択的な取り込みが観測されるか検討を行った。オリゴアニリン11量体、15量体それぞれから作られるらせんチューブに対し、カチオン性のゲスト分子としてN-メチルピリジニウム塩を加えたところ、ゲスト分子の高磁場シフトが観測された。一方、大きさの等しい中性のトルエンではチューブ内への取り込みは全く確認されず、カチオン性分子が選択的に取り込まれる事が明らかとなった。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】2000 - 2001
【配分額】2,200千円 (直接経費: 2,200千円)