糖鎖を認識サイトとしてアッセンブリーされたリボソームの形成
【研究分野】高分子合成
【研究キーワード】
多糖被覆リボソーム / 分子認識 / シアル酸 / マンノースー6-リン酸 / 無血清細胞培養 / グリコホリン / 人工境界脂質 / リポソーム
【研究成果の概要】
天然由来脂質より形成されるリポソームが, 本来有している欠点である, 構造上の不安定性と細胞・組織指向性欠如を克服して, 細胞内への薬物・酵素・DNA等の運搬体および人工赤血球として利用することは意義の深い研究である.
本研究者らは, リボソーム膜中への糖タンパク質グリコホリンの組み込みおよび天然由来多糖のコレステロール誘導体によるリボソーム表面被履による, リボソームの構造強化と糖鎖由来の特異的細胞認識性を同時に達成させた. 概要を以下にまとめる.
(1) 膜タンパク質グリコホリンのリボソーム膜への組み込みには, 人工境界脂質として機能する1.2-ジミリストイルアミドー1.2デオキシホスファチジルコリン(DDPC)を卵黄レシチンに対して40モル%含有させた. 得られたグリコホリン組み込みリボソームは貧食細胞からの食胞性が低下していた. しかし, シアリダーゼによりシアル酸を除去すること食胞を受けやすくなり, さらに, トリプシンにより糖鎖を全て除くと再び食胞性は低下した.
(2) 上の(1)の結果をふまえて天然由来多糖(プルラン・アミロペクチン)のコレステロール誘導体にシアル酸を修飾し, リボソームに被履した. このリボソームは, 貧食細胞からの食胞性が低下していた. これらのことよりシアル酸の認識による貧食細胞からのリボソームの取り込みの抑制が起こることが明らかとなった.
(3) マンナンの6位の水素基の約25%をリン酸化したマンナンー6-リン酸を被覆したリボソームは, 貧食細胞およびマウス線維芽細胞に対して親和性がみられた. また線維芽細胞の無血清培養において, 血清の代用としてマンナンー6-リン酸被覆リボソームが非常に効果的であった.
【研究代表者】