スマネン科学2.0:基礎化学から材料科学へ
【研究キーワード】
スマネン / ソフトマテリアル / 錯体高分子 / 一重項励起子分裂系
【研究成果の概要】
本研究では、フラーレンの部分構造に相当する、お椀型湾曲芳香族化合物「スマネン」をモチーフとして、そのユニークな性質、および集合体構造の特徴を生かし、真に日本独自のマテリアルとして成長させるための発展研究を行う。4つのテーマに対して、それぞれ簡潔に成果を記す。
①新たな一重項励起子分裂系分子に関しては、単量体に関する基礎的な物性の測定を完了し、現在論文を投稿中である。溶液中での挙動を確認するためには2量体の合成が有効であるが、アセンの鍵中間体となるベンゾキノン誘導体についての2量体、および3量体の合成に成功した。今後、これらをアセン誘導体へ反感することが目標となる。
②スマネンをメソゲンとする液晶分子候補の探索中、単純なアルコキシメチル基をスマネン芳香環上へ6カ所導入した誘導体に関して、C=4(すなわちC, Oを加えると枝の長さは6原子)の段階で既に液晶性を発現することを見出した。これはこれまでで最も枝長の短い液晶分子であり、さらなる官能基変換も容易であることが予想されることから、有用なモチーフになることが期待される。さらに一炭素短い分子は結晶性を示すことから、この結晶構造を明らかにすることも次の目標である。
③フッ素置換スマネン誘導体を各種合成し、そのうちジフルオロスマネン単結晶が誘電応答挙動を示すことを見出した。各種測定の結果、カラム状にスタックしたお椀のin plane方向にお椀が揺らぐ現象に由来することを明らかにした。これは、お椀のConcave-Convex間の摩擦が小さいことに起因していると考えられることから、分子設計によりさらなる特性の向上が見込まれる。
④アザホモスマネンの簡便な合成法を見出した。この結果、一重項励起子分裂系分子の新たなモチーフに対する合成ルートが大幅に簡略化されることが期待される。
【研究代表者】