コレステリック液晶ガラスの創製とそのらせん構造に基づく光位相制御機能の応用
【研究分野】高分子構造物性(含繊維)
【研究キーワード】
タンパク質 / セルロース / キチン質 / コレステリック液晶 / 螺旋構造 / 液晶ガラス / 光位相制御 / 分光フィルター / らせん構造 / 円偏光二色性 / 光学活性 / カラーフィルム / 選択反射
【研究成果の概要】
本研究は、省資源、省エネルギーを目指し、これら生体関連高分子をキラル高分子素材として利用し、それが形成するコレステリック液晶の螺旋構造を固化し、様々な光位相マニュピレーション機能を持つフィルムの作成を試みたものである。本研究で得た主要な結果を以下に記す。
1.高分子コレステリック液晶素材として,天然由来の蛋白質,合成ポリペプチド,セルロース,キチンなどの多糖類がある。これらは,もちろん,棒状でかつ光学活性であるため,コレステリック液晶を形成する能力を持ち合わせているが,我々は,これらの液晶素材を,サーモトロピック液晶を示す系-すなわち溶媒を必要とせず温度を上げるだけで,液晶としての流動性が現れる系-に変換できることを示すことができた。
2.これらの生体系高分子のコレステリック液晶では、剛直分子がフィルム面内に面配向するため、螺旋がフィルム面に均一かつ垂直に成長すること、螺旋ピッチの温度依存性が著しく高いため、処理温度の選択によりいかなるピッチの螺旋でも調整できること、また側鎖種の変化により、複屈折値を多様に変えることができるなどの特徴を認めることができた。
3.コレステリックの螺旋構造は、サーモトロピック液晶を急冷ガラス化する手法と、重合溶剤を20〜30%含ませ、それを重合する方法で定量的に固化することができることが判明し、所望の螺旋ピッチを持ち、かつモノドメインの螺旋構造のフィルムを定常的に調製できることが判明した。
4.光学素材としては、微細構造の書き込み、すなわち場所によっては螺旋ピッチが異なったり、螺旋軸の配向様式が変わったりした試料、が必要であるが、サーマルヘッド、あるいは紫外、赤外光照射による書き込み操作で、最低十ミクロンの線幅での書き込み操作が可能であることが判明した。
5.以上の手法で作成したフィルムが、プリントカラー素材、イレーザブル記録材料、円偏光分光フィルター、赤外、紫外カットフィルター、光位相差板、直線偏光子、光拡散材などの光位相マニュウピレーション材料として幅広く有用に活用できるものであることを示すことができた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
幸正 弘 | 大日精化工業(株) | 中央研究所 | 研究員 |
小堀 良浩 | 日石三菱(株) | 中央研究所 | 研究員 |
川内 進 | 東京工業大学 | 大学院・理工学研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1999 - 2000
【配分額】7,400千円 (直接経費: 7,400千円)